訴訟と捜査の現場から

【情報メモ】香港で20数億円相当の賠償請求に直面する岡田和生氏の対応ぶり

香港で続く訴訟に、いくらか進捗があったことを確認しました。岡田和生氏は、ユニバーサルエンターテインメントグループから流出した総額1億5000万香港ドルあまりに関連して賠償請求を受けているこの訴訟においても、ひどい対応を繰り返しているようです。

ここで取り上げる訴訟の概要
訴訟提起の日付 管轄の裁判所
2017年12月27日 香港高等法院
原告 被告
Tiger Resort Asia 岡田和生、
オカダホールディングス、
李堅、ゴールドラックテック、
Okada Fine Art
各被告の詳細についてはこちらを参照
訴訟の内容
ユニバーサルエンターテインメントの子会社・Tiger Resort Asia(TRA)が、岡田和生氏らを相手取って提起した訴訟。ユニバーサルエンターテイメントグループの調べでは、

  1. 岡田和生氏が独断でユニバーサルエンターテイメントグループから李堅氏の会社に1億3500万香港ドル(=日本円にして20億円相当)を貸し付けたこと
  2. 前述の貸付金の大半が李堅氏からオカダホールディングスに移されたのち、岡田和生氏個人の口座にも流れたこと
  3. 岡田和生氏がTiger Resort Asiaから不正に1600万香港ドルの小切手を振り出したこと

などが確認されたとして、原告から関係各位に対し、これらについて賠償を求めている。リンク先の訴訟(イ)に該当。

ここでは、この訴訟のなかで重要視されているふたつの送金、「3rd Sum」「4th Sum」について、

  • 岡田和生氏がどう説明しているか
  • 岡田和生氏の説明に判事はどんな見解を示したか

を中心に、まとめました。

これまでこの訴訟では、岡田和生氏が問題の資金をどこにどう流したか、その足どりを、岡田和生氏個人の銀行口座取引記録などからつかんできました。判明した資金の流れ、そのすべてを把握したい方は、過去に公表したこちらの記事をまずご覧ください。

【情報メモ】香港の法廷で暴かれつつある「岡田和生の使い込み」全容

香港の法廷で、いまなお続く訴訟。このなかで、これまでにわかっていること、はっきりしていることをここにまとめました。 ここで取り上げる訴訟の概要 訴訟提起の日付 管轄の裁判所 2017年12月27日 香 ...





※ここで取り上げる話は、2022年7月29日までに公になった事実をもとにしています

「3rd Sum」と「4th Sum」について

便宜上、この訴訟のなかで「3rd Sum」「4th Sum」と呼称されているのは、それぞれ2016年6月と2016年8月に、オカダホールディングスの銀行口座から岡田和生氏個人の銀行口座に渡った資金のこと。「3rd Sum」「4th Sum」ともに、その原資をたどると、ユニバーサルエンターテインメントグループから流出した資金に行き着くため、裁判所は資金の保全を図る一環で、岡田和生氏に対して、これらの詳細を開示するよう命じている。

美術品の購入費用になった「3rd Sum」

「3rd Sum」は、2016年6月7日にオカダホールディングスから岡田和生氏個人の銀行口座に渡った10億200万円。そしてこのうち10億円が、同月15日に美術品購入費用として美術商の寺元晴一郎氏に支払われたことまでは、銀行口座取引記録などから把握できている。

問題は、この10億円で買った美術品の内訳がはっきりしないこと。裁判所は、購入した美術品の詳細を開示するよう岡田和生氏に命じたものの、当の岡田和生氏はこれまであやふやな説明に終始してきた。

美術品の購入費用になった「3rd Sum」




フィリピンの関係先に渡った「4th Sum」

「4th Sum」は、2016年8月23日にオカダホールディングスから岡田和生氏個人の銀行口座に渡った1800万米ドル。同月31日に、このほぼ全額がフィリピンペソに替わったのち、2016年9月~10月にかけて、フィリピンの関係先5ヶ所に送金された。

香港の裁判所は、3rd Sumと同様に、4th Sumについても資金使途を開示するよう、岡田和生氏に命じている。

フィリピンの関係先に渡った「4th Sum」

岡田和生氏の弁明要旨

以下は、2021年4月22日に、「3rd Sumと4th Sumの詳細を開示しなければ、すぐにも判決を下す」という取り決めになったことから、改めて岡田和生氏が弁明した内容。岡田和生氏は、これらの弁明を、2021年9月15日までに済ませた。

3rd Sumについて

  • (美術商の)寺元が岡田美術館を去ったあと、私は彼に連絡をとっていなかった。
  • 寺元のことをインターネットで検索したところ、佐賀でカフェを経営しているとわかったので、私は弁護士を通じてカフェの住所に書簡を送った。
  • また、以前、寺元本人から教わっていた携帯電話番号に連絡を入れた。
  • 話はできたものの、私が購入した美術品に関する情報を提供するよう求めても、彼は応じなかった。
  • 2021年5月7日と10日、自宅にいたところ、寺元がたずねてきた。しかし、寺元は何の情報も提供しなかった。
  • 2021年5月19日に改めて寺元と会った。しかし、寺元はここでも美術品に関する情報およびその理由を一切開示しなかった。
  • 2021年6月に入ってから、寺元は自分が扱った美術品の詳細について、文書でこう伝えてきた。「我々の仲間内では極秘にしなければならない。これは美術商の職業的義務でもある」。

香港の裁判所が開示した書面

4th Sumについて

  • 私と私の弁護士は、送金相手のひとり、Merlita R. Montefalconを特定できなかった。
  • Laurence Hawkeとは、2021年5月19日に私の弁護士が話をした。
  • Hawkeは、自分がオカダマニラの社員だったことはおぼえていたが、支払いの詳細までおぼえていなかった。
  • Ivarluski Aseronは、フィリピンのファッションデザイナーだった。
  • 私はおぼえていないが、Aseronへの支払いはデザイン料か、Aseronが作った服の代金であったと考えられる。
  • Trans Asia Construction Development社には情報提供を要請したが、回答はなかった。
  • しかし、同社はオカダマニラの建設に関わった会社なので、この支払いは建設プロジェクトに関連したものだと確信している。
  • 同社およびDindo Espeletaとは継続中の紛争があるため、私のアシスタントは彼らに連絡を取ることができない。

香港の裁判所が開示した書面

その他の弁明

  • 私は、世界中に展開する事業会社の経営者として多忙な日々を送っていた。
  • 自分の仕事を部下に委ねていた。
  • 部下のひとりは、数ある金融取引のすべてを処理した。
  • 私は彼を信頼し、自分では記録を残さなかった。
  • 私は会社から追放されたので、美術品に関する情報をふくめ、会社が保管する記録にアクセスできない。
  • 私は高齢であり、健康状態もよくない。

判事の見解要旨

以下は、先に取り上げた岡田和生氏の弁明や、それに対して原告陣営から提出した反証などをふまえた上で、裁判所の判事が示した見解。

3rd Sumについて

  • 岡田和生の弁明と、原告陣営の提出したPI Reportsのコントラストは著しい
  • 「PI Reports」とは?


    判事の見解に出てくる「PI Reports」とは、ユニバーサルエンターテインメントの指示で、私立探偵が作成したレポート(=Private Investigation Reports)のこと。このなかには、2021年 1 月から2021年11 月上旬までの間、岡田和生氏の日常活動を追いかけた様子が、写真とともにつづられている。原告陣営は、岡田和生氏が上記のような弁明を済ませたあと、このレポートを提示した。


  • PI Reportsでは、2021年1月から11月上旬の間に、岡田和生と寺元晴一郎が少なくとも55回会っていたとわかる。
  • 2021年1月から4月までの間だけでも、ふたりは22回ほど会っている。
  • 香港の裁判所が開示した書面

  • PI Reportsの写真は、一部鮮明でないものがある。
  • しかし、その他は、撮影された被写体を特定するのに十分すぎるほど鮮明。
  • PI Reportsの内容に対して、岡田和生は「2021年5月以前に、寺元と緊密に連絡を取り合い、会っていたこと」を否定するが、2021年1月から4月にかけて、寺元と親密か否かを問わず接触していたことは否定していない。
  • 岡田和生は、PI Reportsに対して何ら意味のある返答をしていない。
  • 岡田和生が、2021年5月に寺元に手紙を出したこと、寺元から協力を拒まれたと説明していることについて、信じられないものであると私は考える。
  • 岡田和生は、「部下に委ねていた」「すべての金融取引の詳細を覚えていない」「健康状態が悪い」とも弁明しているが、これらは3rd Sumについての開示とほとんど関連性がない。
  • 3rd Sumは、美術品の購入に関するものであり、複雑な金融取引ではない。
  • また、岡田和生は原告陣営から提示されたinvoiceについて、十分な説明ができなかった。
  • 「invoice」とは?


    ここでいう「Invoice」とは、美術商の寺元晴一郎氏からオカダファインアート社に宛てて、2016年6月6日付けで発行していた請求書のこと。これは、寺元晴一郎氏から岡田和生氏に販売した、総額10億円の美術品を記録したものと考えられている。原告陣営は、これのコピーをこの訴訟のなかで提示した。
  • 岡田和生は以前、原告陣営からこのInvoiceを提示されて、「あなたが寺元氏から購入した美術品の品目がこれらのインボイスに丁寧に記載されているか?」と問われたとき、「はい、その通りだと思います」と回答していた。
  • それなのに、いまは前言をひるがえすような説明をしている。
  • 私からすると、これらは本質的にありえない、矛盾した、信じられないこと。
  • 以上により、3rd Sumについては、岡田和生が十分な情報を開示したとは認めない。
  • 岡田和生は3rd Sumに関する命令を遵守していない、と私は考える。

4th Sumについて

  • 岡田和生がMerlita R. Montefalconを特定できなかったと述べていることについては、この送金の額が非常に小さいことをふまえると、信じられないものとは思わない。
  • Laurence HawkeとIvarluski Aseron への支払いに関しては、ここまでの開示で十分。
  • Trans Asia Construction Development社とDindo Espeletaへの支払いについては、非常に不満足。
  • Espeletaとの間で生じているという紛争の内容もまったく不明瞭である。
  • しかし、私は岡田和生に制裁を加えるためにここにいるわけではない。
  • 「会社から追放された」「ビジネス・レコードにアクセスすることができない」とする岡田和生の弁明を、信じられないと切り捨てることはできない。
  • 香港の裁判所が開示した書面

なお、この訴訟では、「3rd Sumと4th Sumの詳細を開示しなければ、すぐにも判決を下す」との取り決めになっていましたが、判事は結局「若干の不本意ではあるものの」とことわった上で、ここでの判決を見送りました。

しかし、不誠実な対応を続ける岡田和生氏にペナルティがなかったわけではありません。判事は、ここで判決を下す代わりに、岡田和生氏に対し、訴訟で生じた費用の一部を原告陣営に支払うよう命じました。

香港の裁判所が開示した書面

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