ユニバーサルエンターテインメントと法廷闘争を繰り広げていたアルゼゲーミング社が、米国でChapter11――連邦破産法11条にもとづく手続きに入ったと報告しました。米国のChapter11は会社の再建を前提にした手続きですが、アルゼゲーミング社が破産という深刻な状況におちいった事実に違いはありません。
破産の元凶は岡田和生氏
金融危機が起きたわけでもないのに、アルゼゲーミング社はなぜこのタイミングで破産したのか?
当のアルゼゲーミングはこのたびの手続きについて、自社のプレスリリースに
This action is a part of Aruze’s efforts to seek financial restructuring in the wake of a recent garnishment judgment against Aruze resulting from a separate judgment against Aruze’s shareholder.
意訳:このたびの措置は、アルゼの株主に対する別件訴訟の判決にもとづいて、アルゼに対する差し押さえ判決が下されたことを受けて実施する、経営再建に向けた取り組みの一環です。
引用元:Aruze Gaming America, Inc. Announces Plan for Financial Restructuring
とつづるだけで、あいまいな表現に終始していますが、原因が岡田和生氏にあるのは間違いありません。氏はアルゼゲーミングの株式すべてを保有するただ一人の株主なので、プレスリリースに出てきた「Aruze's Shareholder=アルゼの株主」というのはまさに岡田和生氏のことですし、また米国では岡田和生氏個人がBartlitbeck法律事務所から弁護士報酬に関連した損害賠償請求を受け、最終的に「請求額を支払え」との判決を下された事実もありますから、見事なまでにつじつまはあいます。
岡田和生氏とBartlitbeck法律事務所の間で続いていた報酬をめぐる訴訟については、2022年2月には決着がついていました。下記の記事で詳しくつづっています。
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【情報メモ】法律事務所と岡田和生氏の法廷闘争に事実上の終止符 岡田和生氏は72億円相当の支払いが必須に
「弁護士報酬5000万米ドルの未払い」をめぐって米国の法律事務所・Bartlit Beckと岡田和生氏の間で訴訟沙汰になっていた件で、結論が出ました。 Bartlit Beck法律事務所から岡田和生氏 ...
つまり、文中にある「別件訴訟の判決にもとづいて」「アルゼに対する差し押さえ判決が下された」とのくだりは、アルゼゲーミングに岡田和生氏の資産があると突き止めたBartlitbeck法律事務所のほうから差し押さえに動いたということなのでしょう。どうしてアルゼゲーミングが破産の経緯をあいまいな表現で済ませたかといえば、これはひょっとしたら不名誉なニュースに自分の名前が出ることを恐れたオーナー様の意向なのかもしれません。
差し押さえのターゲットは米国の内外を問わず
Bartlitbeck法律事務所は、しばらく前からすでに岡田和生氏が米国の内外で保有する資産に目をつけていたようです。この記事を書くにあたって改めて深掘りしてみたところ、次のようなことがわかりました。
弁護士報酬の回収に関連してわかっていること
- Bartlitbeck法律事務所は米国外でも回収に動いている
- この書面を提出した時点までにBartlitbeckが回収できたのは、請求額63,369,610.52米ドルのうち392,377.31米ドルのみ
- もっとも、これまでに回収できた金額は、Bartlit Beckが回収努力のために費やした弁護士費用およびその他の費用によって相殺されているとのこと
- 香港ではオカダホールディングスとオカダファインアートを含む岡田和生名義の株式を回収する手続きに着手している
- ただしこれらの進展は限られている
- 日本では現在までに岡田和生の銀行口座を差し押さえたほか、岡田和生が保有する上場企業の株式の差し押さえと売却により、およそ39万2000米ドルを回収済みで、近く追加で92万米ドルを回収する見込み
※情報はいずれも2022年はじめに米国の裁判所が公表した書面にもとづく
Bartlitbeck法律事務所としては、地獄の果てまで岡田和生氏を追いかけるつもりなのでしょう。
Chapter11の手続きに着手したアルゼゲーミングは、ここから再建を目指すようですが、ユニバーサルエンターテインメントから特許侵害があったと訴えられて5年近く続いてきた法廷闘争のほうは、この先どうなるのか、いまのところわかりません。被告にはアルゼゲーミング社とは別に、岡田和生氏の名前も並んでいましたから、もしかすると岡田和生氏単体で訴訟を続けるのかもしれません。岡田和生氏といえば、とにかく負けず嫌いで、勝ち目がなくとも最後まで戦い続けたがるような人ですから、ありえない話ではないでしょう。もっとも、そろそろ懐具合がそれを許さなくなってくるのかもしれませんけれど。
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