別の事件とのつながり

【書評】兜町コンフィデンシャル | 「裏」を知るための1冊

兜町コンフィデンシャル

  • 出版社:東洋経済新報社
  • 著者:高橋 篤史
  • 発売日:2009年5月
  • 昔話

    思い出すのは、ある日、自分宛てに届いた一通の郵便物。

    「パチスロ攻略」

    こんな文言を大きく強調した、A4サイズくらいの封筒だったと思います。パチンコもパチスロも遊ばない自分にとっては、見に覚えのない郵便物でした。

    「なぜ、こんな郵便物が自分に?」

    その答えがわかるのは、ある事件について、知るようになってからのことです。

    アイ・シー・エフ事件

    梁山泊事件、の呼称で記憶している方もいるかもしれません。当時、東証マザーズに上場していたアイ・シー・エフ社が、パチンコ攻略情報提供を手がけていた梁山泊との間で、不当な企業買収を実施した件です。2004年の終わりにあった不正行為が2008年になって事件化し、アイ・シー・エフと梁山泊、両社の関係者が多数逮捕、起訴されました。

    梁山泊グループによる相場操縦事件(下) | 東京レポート:|NetIB-NEWS|ネットアイビーニュース
    梁山泊グループによる相場操縦事件(下) | 東京レポート:|NetIB-NEWS|ネットアイビーニュース

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    冒頭で取り上げた郵便物が自分に届いたのは、アイ・シー・エフの株式を持っていた時期があったから、というわけです。おそらくは、アイ・シー・エフの株主名簿を梁山泊の顧客名簿に流用したのでしょう。

    企業や市場のダークサイドを読み解くためのバイブル

    企業において不正が実行されるとき、その現場ではどんなことが起きているのか? 外からでは知るよしもない、そんな実情にクローズアップしたのが本書『兜町コンフィデンシャル』です。

    ​本書で取り上げているのは、1980年代後期から2008年のリーマンショック直前までにあった、不正や事件の数々。先のアイ・シー・エフ事件をふくめ、さまざまな事例が、実に生々しく綴られています。

    ちょっとした小さなトラブルを処理しきれなくなって、会社の金を流用したり、高利をむさぼる金融ブローカーに頼ったりするようになっていく過程。手形やエクイティファイナンスを乱発して、目先の資金繰りに対処するうち、会社がますますボロボロになっていく様相。さらに、これらが泥沼化していくなかでは、無知な人間や投資家が巻き込まれ、収奪されていく。そのかたわらで私腹を肥やそうとしているのが誰かといえば、多くはなりふり構わない行動に走る反社会的な人たち。ときには、弁護士、政治家、元官僚といった表向き立派な肩書きの面々まで出てくる。

    証券市場があるからこそ、企業は資金調達が円滑になり、その結果さまざまな投資を通じて新しい技術やサービスが生まれてきたという側面はあります。しかし、本書に綴られているのは、不正な行為を合法的な取引に装うために証券市場が用いられる、そんな様子です。違法か合法か、その線引を難しくすることで、摘発を逃れようとする狙いがあるのでしょう。

    各種の事例を深く知って思うのは、歴史は繰り返しているということ。本書のなかの描写と、いま現在で大きく異なるのは、法律の改正や時代的背景の変化によって、不正に用いられる手法が変わったことくらい。描写のなかには、いまユニバーサルエンターテインメントの経営騒動において起きていることと重なるようなところもあり、この本を読んでいると、鳥肌が立ちます。

    歴史が繰り返してしまう根源には、人間の弱さ、醜さ、欲深さがあるのでしょう。その意味で、本書には決して色あせない価値があると感じます。​


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