「ユニバーサルエンターテインメントが公表した調査報告書は、私の名誉を毀損するものだ」――。こんな言いぶんで、岡田和生氏から複数の関係者に対して提起していた訴訟の判決が、2020年11月27日に下りました。結果は、岡田和生氏の全面敗訴です。
この記事のあらすじ
- 岡田和生氏が名誉毀損を理由に提起していた訴訟は、氏の敗訴という判決に
- 訴訟のなかで岡田和生氏が出していた主張はことごとく却下されており、全面敗訴と言える
敗訴は必然――立ちはだかった「違法性阻却」の壁
訴訟の概要 |
訴訟提起の日付 | 管轄の裁判所 |
2017年9月4日 | 東京地方裁判所 |
原告 | 被告 |
岡田和生 | ユニバーサルエンターテインメント、富士本淳ほか |
訴訟の内容 | |
岡田和生氏が提起した訴訟。氏は、2017年8月30日にユニバーサルエンターテインメントから公表された調査報告書が名誉毀損にあたるものだとして、損害賠償を求めている。 |
下記の記事では、ユニバーサルエンターテインメントや岡田和生氏に関連して、日本で起きた訴訟を一覧にしています。
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【地域別】ユニバーサルエンターテインメント関連訴訟相関図【日本】
ユニバーサルエンターテインメントおよび岡田和生氏に関連して、日本国内で起きた訴訟をまとめました。なお、ここに掲載中の訴訟は、ユニバーサルエンターテインメントにおいて経営騒動が表面化してから提起されたも ...
この訴訟でやり玉に上がっていた調査報告書は、ユニバーサルエンターテインメントのグループ内で発覚した不正行為3件を調査し、まとめたものでした。そして、この報告書には調査の結果として、「3件の不正行為はいずれも岡田和生氏が主導したもの」という結論が記されていましたから、当の本人にとって「社会的評価をおとしめるもの」になるのは確かです。では、なぜ訴訟は岡田和生氏の敗訴に終わったのでしょう?
下記の記事では、調査報告書の内容について詳しくふれています。
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【導入2】岡田和生氏に疑惑 会社に断りなく多額の送金を指示か
岡田和生氏による不正行為については、ユニバーサルエンターテインメント(UE社)と利害関係のない弁護士3名からなる特別調査委員会が、調査結果を出しています。調査結果が公になったのは2017年8月30日の ...
決め手になったのは、調査報告書の内容が「公正な論評」だったことでした。
調査報告書のように、何かしらの意見や論評をつづったものが審議の対象になった場合、判決を左右するのは、「その行為が名誉毀損にあたるかどうか」ということだけではありません。あわせて、表明した意見や論評が違法行為にあたらない、と考えられる事情や要因(=「違法性阻却事由」)はないか、この点も検討事項になります。言い換えれば、仮に誰かの社会的評価を低下させるような言動があったとしても、個別の事情によっては違法性はないという結論になり、罰則を科さないこともあるのです。
このケースが岡田和生氏の敗訴に終わったのも、こういった事情からのことです。この裁判では、
- 公益性
※調査報告書の内容を公表することは、ユニバーサルエンターテインメントの株主をはじめとした利害関係者に向けた報告になる - 真実性
※物証などによって十分な事実を示した - 報告書の内容は意見ないし論評の域を逸脱していない
※人身攻撃に及んでいない
こういったことが阻却事由となり、「名誉毀損による不法行為にはならない」との判断になりました。要約すれば、「調査報告書の公表は、原告の社会的評価を低下させる、けれどもこれは公益につながることだったし、その内容も十分に立証されていた」ということになります。
「全面」敗訴
他方で対照的だったのは、岡田和生氏から出ていた数々の主張です。これらは、裁判官からことごとく退けられました。たとえば、氏がユニバーサルエンターテインメントの代表取締役・富士本淳氏を名指しして、「彼は不正な送金に関与した」だとか、「私はこの件で彼を追及するつもりだったが、追及を恐れた彼によって、会社から追放されることになった」だとか主張していた件については、判決文のなかでこう切り捨てられています。
この手の話でまず立証責任を負うのは、当然「問題がある」と主張するほうです。それにもかかわらず、この体たらくというのは、これこそ問題でしょう。自分から提起した訴訟のなかで、自分が主張してきた話を立証できないのなら、それはでっち上げの類にほかならないことを意味します。……もっとも、かねてからこの件をデタラメだと指摘してきた立場からすれば、この結果は「案の定」というのが率直なところですが。
下記の記事では、岡田和生公式サイトに掲載されている本人の主張が、ウソばかりであることを指摘しました。
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ウソ偽りのオンパレード “演出屋”岡田和生の手口
事実が何であるか見定めること、見定めようとすることは、あらゆる局面で重要な行程です。もちろん、予測することや想像することも役に立ちますが、事実をおざなりにしていたら、そのぶん実態を見誤ることになりかね ...
しかしこうなってくると見過ごせないのは、岡田和生氏の公式ウェブサイトです。このなかではいまだに、ユニバーサルエンターテインメントの関係者複数の実名を挙げて、「誰々は不正に関与していた」だの何だのと非難する文面がそのままになっています。
はたして、実際に他人をおとしめるような行為をしているのは、どちらなのでしょうね?
なぜ、たった1回のリツイートが名誉毀損になるのか?―橋下徹の問題解決の授業 SNSの基礎知識編
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