遊技機メーカーとして知られるユニバーサルエンターテインメント社と、その創業者である岡田和生氏に関わる一連のトピックを追いかけております。 ​

ユニバーサルエンターテインメントの経営騒動に潜む闇

訴訟と捜査の現場から

株主代表訴訟で岡田和生氏に賠償命令下る(ただし実効性はナゾ)

2021年11月25日、東京地裁でユニバーサルエンターテインメントの株主代表訴訟に判決が下りました。裁判所から出た判決は、この訴訟で被告になっていた岡田和生氏におよそ20億円を支払うよう命じる内容であり、氏の全面敗訴という色合いになっています。

東京地方裁判所入口

合計およそ20億円の賠償命令

訴訟は、ユニバーサルエンターテインメントの株主1名が、同社で表面化した不正3件、すなわち①同社グループから1億3500万香港ドルの資金が流出した件、②同社グループから受取人不明の小切手(1600万香港ドル相当)が振り出されていた件、③同社グループの資金が、韓国で岡田和生氏のプライベートカンパニーのために使われていた件を問題視して提起していたものです。原告は、これら3件によってユニバーサルエンターテインメントが被った損失の賠償を、同社の株主――つまり「会社のいち所有者」として求めてきたのでした。

株主代表訴訟の概要
訴訟提起の日付 管轄の裁判所
2018年3月10日 東京地方裁判所
原告 被告
個人株主X 岡田和生
訴訟の内容
ユニバーサルエンターテインメントの株主が、同社グループで発覚した不正3件を追及すべく提起した訴訟。原告株主は、当初ユニバーサルエンターテインメントの関係者複数名を被告として並べていたが、最終的には被告を岡田和生氏ひとりにしぼった。その結果、この訴訟では「岡田和生が取締役としての職責を果たしていたか」が最大の焦点になった。リンク先の訴訟(う)に該当。

このたび出た判決は、こういった原告の請求を認めるものとなりました。東京地裁は①〜③いずれの件についても「被告・岡田和生に問題があった」と判断し、岡田和生氏に対して、日本円換算で合計およそ20億円をユニバーサルエンターテインメントに支払うよう命じています。

東京地裁から出た一審判決の主な内容

  1. 岡田和生は、ユニバーサルエンターテインメントに対して1億3600万香港ドルおよび17万3562.23米ドルを支払え
  2. 訴訟費用は岡田和生の負担とする
  3. この判決は、1に限り仮に執行できる

判決のなかで香港ドルの支払い額が「ユニバーサルエンターテインメントグループから流出した資金1億3500万香港ドル+宛先不明の小切手1600万香港ドル=1億5100万香港ドル」に満たない理由は、関係者から事前にいくらか返済を受けているためです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

それでも横たわる「消えた1億3500万香港ドル」のナゾ

去る2021年9月14日、日本では岡田和生氏の上告が棄却されたことで、ユニバーサルエンターテインメントの勝訴が確定しまし ...

もっとも、こうやって原告の請求が認められるのはあらかじめ予想できたことでした。なぜなら、くだんの不正3件については、「原告・ユニバーサルエンターテインメント/被告・岡田和生」という組み合わせで進んでいた別の訴訟がすでに決着しており、このなかでは一足先に「問題の責任は岡田和生にある」との結論まで出ていたためです。ふたつの訴訟で同様の件を扱っているのであれば、その結論もまた似たようなものになる。当然これは驚くような話ではないでしょう。

先行して決着している「原告・ユニバーサルエンターテインメント/被告・岡田和生」の訴訟については、下記の記事をご覧ください。なお、ユニバーサルエンターテインメント自身が原告になった訴訟と、ここで取り上げた株主代表訴訟の違いは、前者が不正3件の調査にかかった費用だけを岡田和生氏に求めているのに対し、後者は不正3件によって同社が被った損害そのものを請求している点にあります。ユニバーサルエンターテインメント自身が、なぜ調査にかかった費用しか求めなかったのか、この点については後述します。

最高裁判所が結論 損害賠償請求訴訟は岡田和生氏の敗訴に終わる

ユニバーサルエンターテインメントグループで繰り返されてきた不正の責任は誰にあるのか? こんな問題をめぐって2017年から ...




現実は「実のない判決」か

さて、今回の判決には「1に限り仮に執行できる」との文面がつきました。仮執行といえば、訴訟の判決が確定する前であっても、被告に支払いを要求できる権利のことです。よって、この株主代表訴訟の場合なら、上告審の有無にかかわらず、ユニバーサルエンターテインメントから岡田和生氏に対して、日本円にしておよそ20億円の支払いを求めることができるのは法律上、間違いありません。

ただ、実際にこの判決でもってユニバーサルエンターテインメントが岡田和生氏から資金を回収できるかといえば、どうでしょう?

問題は、岡田和生氏の持つ大半の資産が香港にあるという点です。

参考までに調べてみたところ、相手方の持つ財が日本国外にある場合、日本の裁判所から出た命令でもってそのまま強制執行、というわけにはいかないとの話を確認しています。別途、相手国で司法手続きを経て、認めてもらうことが必要だと。

弁護士法人のウェブサイトから

問題は,送達が上手くいって勝訴判決を得たとしても,海外の財産に対してそのまま強制執行することはできず,当該国の裁判所で「判決の承認」という手続きを取らなければならないという点にある。

引用元:海外の財産に対する強制執行(2016年11月26日付け)

弁護士の運営するブログから

例えば中国などの国の場合は相互協定がなく、日本の裁判所が出した判決は通用しません。従って、このような国にある預金口座などの財産に強制執行をするには、提訴の段階から中国の裁判所で手続を進める必要があります。

引用元:海外の銀行預金口座は差押えできるか(2013年11月12日付け)

となると、今回の場合、日本で仮執行が出ているからといって、氏に20億円の支払いを拒まれたら、ひとまずはお手上げです。代わりに20億円に相当するだけの資産を差し押さえようとしたところで、日本には差し押さえる資産がないと考えられますから。なかには、「ユニバーサルエンターテインメントの運営する岡田美術館には、岡田和生氏所有の美術品があるじゃないか」と指摘する人もいるかもしれませんが、あれらは岡田和生氏個人が香港にこさえた美術品管理会社・Okada Fine Artの持ち物です。きっと手の出しようがありません。

おそらくユニバーサルエンターテインメント自身は、あらかじめこうした実態を考慮したのでしょう。同社は、この株主代表訴訟がはじまる前から、不正3件で被った損害そのものを岡田和生氏とその関係先に請求すべく、香港の現地で別途訴訟を提起していました。

香港で続く訴訟の概要
訴訟提起の日付 管轄の裁判所
2017年12月27日 香港高等法院
原告 被告
Tiger Resort Asia 岡田和生、
オカダホールディングス、
李堅、ゴールドラックテック、
Okada Fine Art
各被告の詳細についてはこちらを参照
訴訟の内容
ユニバーサルエンターテインメントの子会社・Tiger Resort Asia(TRA)が、岡田和生氏らを相手取って提起した訴訟。ユニバーサルエンターテイメントグループの調べでは、●岡田和生氏が独断でユニバーサルエンターテイメントグループから李堅氏の会社に1億3500万香港ドル(=日本円にして20億円相当)を貸し付けたこと ●前述の貸付金の大半が李堅氏からオカダホールディングスに移されたのち、岡田和生氏個人の口座にも流れたこと ●岡田和生氏がTiger Resort Asiaから不正に1600万香港ドルの小切手を振り出したこと などが確認されたとして、原告から関係各位に対し、1億3605万香港ドルを請求している。リンク先の訴訟(イ)に該当。

また、ユニバーサルエンターテインメントは、韓国でも岡田和生氏に訴訟を提起し、不正3件のうち韓国が舞台になったもので被った損害・17万3562.23米ドルを氏に請求しています。

【情報メモ】韓国の訴訟に進展 一審判決が下る

韓国において、ユニバーサルエンターテインメントグループから岡田和生氏に対して提起していた訴訟で、一審判決が下っていたこと ...

実際にユニバーサルエンターテインメントが岡田和生氏から賠償を受けるには、結局こちらの決着を待つほかないように見えます。

したがって、このたび出た株主代表訴訟の判決に実務上どれほどの意味があるのかといえば、一般に世間が考えるほどではない、というのが実情ではないでしょうか。代表訴訟を提起した株主の一連の行動に何か意味を見出すとしたら、「不正3件の責任が岡田和生氏にあることを、ユニバーサルエンターテインメントの内通者ではない第三者の立場から改めて明確にしたこと」くらいのように思います。

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