ここに、「奇妙な事実」があります。そしてこの事実に基づけば、岡田和生氏の主張は、またしてもたちまち矛盾をはらんだものになります。言うなれば、これは氏にとって「不都合な真実」になるのでしょう。――皆様、必読です。

画像は星島網より
この記事のあらすじ
- 岡田和生氏に関わる、大きな矛盾を指摘する
- この矛盾は、香港の汚職捜査機関に関連した報道と結びつくもの
- 事実を整理すると、今後岡田和生氏の「逮捕」が香港で再燃すると考えられる
相反するふたつの事実
書き出しで言及した「奇妙な事実」とは、香港で係属している訴訟の実態にあります。じつはこの訴訟のなかで、ユニバーサルエンターテインメントグループから岡田和生氏個人に不正な形で還流したと見られる資金の調査が、いまもなお進められているのです。裁判所は、この調査に関連して、岡田和生氏に新たな命令も出しています。「問題の資金はどこにあるのか、何に使ったのか、詳細を開示せよ」と。
ここで言及した訴訟の概要 |
訴訟提起の日付 | 管轄の裁判所 |
2017年12月27日 | 香港高等法院 |
原告 | 被告 |
Tiger Resort Asia | 岡田和生、 オカダホールディングス、 李堅、ゴールドラックテック、 Okada Fine Art ※各被告の詳細についてはこちらを参照 |
訴訟の内容 | |
ユニバーサルエンターテインメントの子会社・Tiger Resort Asia(TRA)が、岡田和生氏らを相手取って提起した訴訟。ユニバーサルエンターテイメントグループの調べでは、①岡田和生氏が独断でユニバーサルエンターテイメントグループから李堅氏の会社に1億3500万香港ドル(=日本円にして20億円相当)を貸し付けたこと ②前述の貸付金の大半が李堅氏からオカダホールディングスに移されたのち、岡田和生氏個人の口座にも流れたこと などが確認されたとして、原告から関係各位に対し、これらについて責任を追及している。リンク先の訴訟(イ)に該当。 |
【参考】

岡田和生氏は、先立ってオカダホールディングスから李堅氏に融資していた1億3500万香港ドル(図中A)を回収するため、①の貸し付けを実行した。
なぜ、こんなことが「奇妙な事実」になるのか? この理由について即座に勘づくのは難しいかもしれませんが、時間をさかのぼってみると、このおかしさは自然と浮き彫りになります。
まず押さえておきたいのは、2019年2月22日です。この日、香港では次のようなニュースが出回りました。
【参考】2019年2月22日に出回った、岡田和生氏の「釈放」を報じる記事(の一例)
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涉串謀詐騙案獲撤控 日本彈珠機大王岡田和生無條件釋放 | 星島日報
《頭條日報》獨家得悉、曾是永利度假村股東及永利澳門非執行董事的「日本彈珠機大王」岡田和生(Kazuo Okada),疑捲入一宗串謀詐騙案,指
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ニュースが報じたのは、前年の夏から香港の汚職捜査機関・ICACの捜査対象になっていた岡田和生氏の動向です。記事によれば、「ICACは、岡田和生氏による1億3500万香港ドルの詐取があったとして、2018年に岡田和生氏と李堅氏を逮捕した」ものの、「調査は終了」し、「この日の午後、岡田和生氏は無条件で釈放された」となっています。つまり、2018年の夏に氏がICACの取り調べを受けてから公になった一連の捜査は、結局何事もなく2019年2月22日に終局したと、そう報じているわけです。
2018年の夏にICACが岡田和生氏を逮捕した件については、当時こちらの記事でふれています。
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香港の捜査当局が岡田和生氏の身柄を一時拘束
渦中にある岡田和生氏は、一連の不正行為が明るみになってから1年少々経過した2018年7月末ごろ、香港で汚職を取り締まる廉政公署(ICAC)に一時身柄を拘束されていました。この拘束の理由については諸説あ ...
そして、この「釈放報道」からおよそ1ヶ月後、2019年3月25日に日本で開催されたユニバーサルエンターテインメントの株主総会では、会場近くで岡田和生氏とその取り巻きたちが下記のようなビラを配り、そのなかでこの「釈放」についてもう少し詳しく言及していました。岡田和生元会長から提出した証拠資料がICACによって確認されたことで、元会長に対する犯罪嫌疑は晴れたのだと。
「釈放報道」のあと、岡田和生氏たちがユニバーサルエンターテイメントの株主総会に現れた日のことは、こちらの記事でふれています。
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岡田和生氏が反論キャンペーン 「逮捕」の件はひた隠す
テクノロジーの進化に伴い、情報の伝達手段は多様化してきました。今やインターネットは、世界中の人にとって当たり前のもの。個人個人が日々パソコンや手元のスマートフォンからさまざまな情報を発信するのも、ごく ...
ただ、ここで思い出してほしいのが、冒頭で取り上げた訴訟と、そこで岡田和生氏に対する調査が続いているという現実です。なぜなら、この訴訟ではICACの捜査と同じように、「岡田和生氏がユニバーサルエンターテインメントグループから1億3500万香港ドルを流出させ、詐取したのかどうか」について、原告と被告で争っているためです。
話をわかりやすくするために、ここで今日までに起きてきたことをざっと整理してみましょう。コトの本質が見えてきます。
岡田和生氏の矛盾が浮かび上がる時系列

捜査だけが打ち切られているという不可解
いかがでしょう? こうやって整理してみると不可解なのは、例の「釈放」報道のあとも、冒頭で言及した訴訟は何事もなく引き続き係属し、裁判所から新たな命令まで出ているということ。この点です。要は、1億3500万香港ドルの詐取について、当事者の逮捕にまで踏み切った捜査当局だけがなぜか早々に調査を打ち切る格好になっていて、整合性に欠けるのです。
岡田和生陣営の配ったビラによれば、ICACが捜査の打ち切りを決めるほど、有力な根拠や書面があるはずですが、そういったものはこの訴訟でまったく話題になっていません。なる気配もありません。
捜査と訴訟で扱う問題が同じなら、話の展開も同じ方向に進んでいくと考えられるのに、現実にはそうなっていない。これは致命的なちぐはぐでしょう。
参考までにふれておくと、岡田和生氏がユニバーサルエンターテイメントグループから1億3500万香港ドルを流出させたとされている件については、すでに日本の訴訟で「(岡田和生氏に)取締役としての善管注意義務違反があった」との結論も出ています。日本と香港という国の違いはありますが、この事実もまた「釈放」に対する大きなちぐはぐだと言えましょう。日本で出た判決について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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損害賠償請求訴訟に判決下る 東京地裁は岡田和生氏に支払命令
岡田和生氏と、ユニバーサルエンターテイメント。両者が日本の法廷で火花を散らしたその第一ラウンドは、会社サイドの勝利という結果になりました。 ユニバーサルエンターテインメントに軍配 このたび裁判所が判決 ...