不正の嫌疑をかけられてユニバーサルエンターテインメント(UE社)を追い出された格好になった岡田和生氏は、オカダホールディングス(OHL)の実権を取り返すべくあらゆる手を講じてきました。自身の長女である裕実氏に接触して、彼女を味方につけたこともそのひとつです。こうした動きは、何も日本国内に限った話ではありません。OHLの所在地である香港でも、さまざまな展開があります。このあたりについては、日本で報じられることがほとんどないために、あまり知られていないかもしれません。
この記事のあらすじ
- これまで香港でどんなことが起きてきたか振り返る
- 香港では、岡田和生氏がオカダホールディングスの実権を取り戻すべく複数の手立てを打ってきた
- しかし、岡田和生氏のアプローチはどれも成果らしい成果に結びついていない
岡田和生氏サイドは香港で立て続けに攻勢 しかし……
香港においては、岡田和生氏が裕実氏を自分の味方につけたあとまもなく、OHLの臨時株主総会を開き、当局に書類を提出したと主張しています。自らの持つOHL株式と、裕実氏の持つOHL株式を合わせれば、名目上は過半数の議決権を確保したことになるわけで、これをもとにOHLの代表復帰手続きを進めたということでしょう。
2017年9月14日の記者会見から
岡田HDは今月初めに臨時株主総会を開き、和生氏の代表復帰を決めるとともに、香港の登記局に書類を提出した。
2017年9月14日の記者会見から
中山弁護士によると、翌8日、Okada Holdings Limitedの臨時株主総会が開かれ、岡田和生氏が同社の代表であることを確認したという。
年が明けて2018年になってからも、岡田和生氏サイドの動きは続きました。代表例を挙げるだけでも、
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- 父親サイドについた裕実氏が、以前に兄の知裕氏と結んだ信託契約は無効なものであるとして訴訟を提起
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頭條日報
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- 同じく裕実氏が、自身の保有株式を騙し取られたとして知裕氏などを相手取って刑事告訴
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http://www.orangenews.hk/news/system/2018/03/14/010084878.shtml
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- 岡田和生氏がOHLの取締役に復帰する旨の申請を、当局によって拒否されたことについて、高等裁判所の介入を求めた
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公司被拒更改最新董事變動 日彈珠機大王申覆核|即時新聞|港澳|on.cc東網
日本「彈珠機大王」岡田和生(Kazuo Okada)今日(21日)入稟香港高等法院申請司法覆核,指他任大股東的香港公司「岡田控股有限公司」出現控制權爭議,他兒子委任的新董事將他踢出董事局,他則靠女兒之 ...
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といったものがあります。しかし、いずれの手立ても、岡田和生氏が望むような成果には結びついていません。
岡田HDの香港の登記。
昨日Tweetした、保留中の6月13日付の役員の変更通知が今日見ると無くなっている。却下になった??
少なくとも香港で闘争が繰り広げられていると妄想できる。 pic.twitter.com/kKzRCWF2D6— ポボンた (@tarou_mousou) 2018年6月27日
2018年6月には、OHLの取締役について変更を申請した形跡が見られたものの、しばらくして消失しています。
こうしたなか、2018年9月には香港当局から注目に値する見解が出ました。あの手この手でOHLの取締役の変更を迫る岡田和生氏に対して、当局はこの件について、日本の法律が関わるために、自分たちには決定権がないとの見方を示したのです。このことを伝えた現地の記事が、こちらになります。
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拒更新岡田和生董事身份 公司註冊處稱涉日本法律|即時新聞|港澳|on.cc東網
日本「彈珠機大王」岡田和生(Kazuo Okada)去年被兒子岡田知裕(Tomohiro Okada)踢出香港註冊的家族公司岡田控股有限公司的董事局,其後獲女兒岡田裕美(Hiromi Okada)贈股 ...
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では、ここでいう「日本の法律」とは何でしょう? その答えは、記事を読み解いていくと見つかります。該当する箇所は、このあたり。
香港の報道から
處方指出,此案涉及裕美先後將其股份轉讓予知裕,其後又收回改為授權父親和生行使其股權,其決定是否具法律效力,更涉及日本法律,處方根本無法代為決定。
翻訳ツールを頼りにした意訳になりますが、文中では、裕実氏と知裕氏がずっと以前に結んだ信託契約のことと、そのあと裕実氏が父親サイドについたことを取り上げて、「その決定に法的効力があるかどうか、日本の法律と関連するため、当局は決定できない」と結んでいます。
つまり、日本で交わした信託契約があるのだから、その効力について日本の法律で白黒つけないと、自分たちも決定は下せない、というのが香港当局としての見解なのだと受け取れます。記事の終わりには、
香港の報道から
法官決定押後另定日期宣判。
意訳:裁判官は別の日に決定を延期することにしました。
とあり、結局こうした見解から、取締役変更に関する判断は先送りされることになったようです。
一部の人が「ある裁判」に注意するその理由とは
さて、ここからは余談になります。……といっても、一部の方にとっては知っておくべきこと、になるかもしれません。
そもそも、なぜ岡田和生氏がこれほどまでにOHLの実権にこだわっているかといえば、それすなわちユニバーサルエンターテインメントの支配権も握ることにつながるから、でした。こういった支配権の移動が実現した場合、「カジノをあと3つは作りたい」と公言する氏にとっては、野心の実現に向けた足がかりになるかもしれません。その一方、ユニバーサルエンターテインメントとしては経営の混乱につながる可能性を秘めています。ご存知の方も少なくないでしょう。2018年初頭に起きた、米国ウィン・リゾーツ社の騒動を。あの件では、創業者であり、当時最高経営責任者であったスティーブ・ウィン氏にセクハラ疑惑が持ち上がりました。その結果、ウィン・リゾーツがカジノ運営会社として適切なのか、各国当局がその調査に乗り出すような騒ぎになり、株価にまで影響が及びました。
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米ウィン・リゾーツ株が急落-マカオ当局が会長のセクハラ疑惑を調査 - Bloomberg
米カジノ運営会社ウィン・リゾーツのスティーブ・ウィン会長を巡るセクハラ疑惑は、遠く離れたマカオにまで波紋が広がり、同社にとって頭痛の種となっている。
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結局、ウィン・リゾーツのケースではスティーブ・ウィン氏が身を引く形で決着したものの、ユニバーサルエンターテインメントの支配権を岡田和生氏が取り戻すことになれば、こうした混乱の二の舞になる展開が考えられます。氏にはさまざまな不正疑惑がかけられているのですから。
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【導入2】岡田和生氏に疑惑 会社に断りなく多額の送金を指示か
岡田和生氏による不正行為については、ユニバーサルエンターテインメント(UE社)と利害関係のない弁護士3名からなる特別調査委員会が、調査結果を出しています。調査結果が公になったのは2017年8月30日の ...
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ある事件の被告人と、岡田和生氏をつなぐ人脈
ユニバーサルエンターテインメント(UE社)の特別調査委員会が指摘した問題に登場する李堅氏と、岡田和生氏。両者の関係は、2014年11月にオカダホールディングス(OHL)から李堅氏宛に1億3500万香港 ...
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公文書を巡る不可解 岡田和生氏周辺が関与?
ユニバーサルエンターテインメント(UE社)の関係会社であり、フィリピンにおいて統合型リゾート「Okada Manila」を運営するTiger Resort Leisure & Entertai ...
下記の記事について、6425:ユニバーサルエンターテインメント株式に注目する一部の投資家の方が関心を持っているのも、このあたりと関係があるのでしょう。日本で係争中の裁判が、OHLの議決権争いに終止符を打ち、その結果秩序、あるいは混乱をもたらす――そんな可能性がある。……となれば注目せざるをえない、というわけです。
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続・オカダホールディングスを巡る議決権争い
世間から「内紛」とも評される、ユニバーサルエンターテインメント(UEC)の経営騒動において、Okada Holdings Limited(OHL)の議決権争いがひとつのキーになっているのは既報の通り。 ...