米国ナスダックに上場する26Capital社をパートナーにすえて、「オカダマニラ擁する統合型リゾート事業の上場」を実現するはずだったユニバーサルエンターテインメントのプランは、幻に終わりそうです。このプランはこれまで、ユニバーサルエンターテインメントと26Capitalの双方が協調して取り組んでいるものと考えられてきましたが、足元では物議をかもすような内幕が明らかになりつつあります。
パートナーシップを組んだ両者が法廷で対立
これまで26Capitalとユニバーサルエンターテイメントは、特別買収目的会社――いわゆるSPACを用いた上場スキームで合意し、契約まで交わして手続きを進めてきたはずでした。それだけに、この上場プランが幻に終わるというのは、多くの人にとってにわかに信じがたい展開でしょう。率直なところ、当サイトのようにユニバーサルエンターテインメントにまつわる一連のトピックを追いかけてきた立場からいっても、これは驚くような話でした。
下記は、26Capitalとの合意が明らかになった2021年に公開した記事です。26Capitalの代表者・Jason N.Ader氏などについて取り上げています。
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【情報メモ】「オカダマニラの米国上場」に進展
ユニバーサルエンターテインメントが模索していた「オカダマニラの上場」に関して、進展がありました。同社は今後、オカダマニラの上場を実現するため、米国ナスダックに上場する特別買収目的会社(=SPAC)・2 ...
上場プランにただよう暗雲。それを象徴するのが、26Capitalとユニバーサルエンターテイメントの間に生じた不和です。

「オカダマニラ上場」の大まかなイメージ
両者の不和は、2023年2月に26Capitalが米国デラウェア州でユニバーサルエンターテインメントグループを提訴したことから表面化しました。
26キャピタルからの提訴があったことについては、2023年2月7日にユニバーサルエンターテインメントから開示されています。
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当社子会社に対する訴訟の提起に関するお知らせ
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26Capitalの提訴は、ユニバーサルエンターテインメントグループの対応が手続きの遅れを引き起こしていると非難するものです。この訴訟を通じて26Capitalは、契約で約束していた手続きを速やかに完了するよう裁判所からユニバーサルエンターテインメントグループに命じてほしい、と求めています。
26Capitalが提出した訴状の要旨
- ユニバーサルエンターテインメントグループは、2021年10月15日に26Capitalと結んだ合併契約に違反している
- 彼らは契約で約束した手続きを進めるための努力をおこたってきた
- 最初のForm F-4を米国証券取引委員会に提出した直後から、ユニバーサルエンターテインメントグループは足を引っ張りはじめた
「Form F-4」とは?
ここに出てきたForm F-4とは、米国外に所在する企業が米国証券取引委員会に登録するときに届け出なければならない書面のこと。ユニバーサルエンターテインメントグループが提出したForm F-4は、ここから確認できる。
- 2022年5月に入ると、彼らは第一四半期の監査を実施するための財務諸表を、監査法人に提出するのを遅らせた
- また、Form F-4を公示する前に、役員の異動にまつわる問題(≒おそらく2022年4月27日にフィリピンで出たSQAOのこと)を解決しなければならないとも主張しはじめた
- 2022年5月末になると、オカダマニラの敷地は岡田和生グループによって完全に支配された
- この不適切な乗っ取り行為を許したあと、ユニバーサルエンターテインメントグループは不十分な対応しかしなかった
- たとえば彼らは、不適切な乗っ取り行為が続くさなか、岡田和生グループに1000万米ドル以上の持ち逃げを許した
- ユニバーサルエンターテイメントグループは、岡田和生グループがオカダマニラを占拠している最中、米国証券取引委員会に書面を提出するために必要な情報を監査法人に提供できなかった、と主張した
- しかし彼らは現地フィリピンの弁護士から、「ユニバーサルエンターテイメントグループはオカダマニラを運営するTRLEI社の株主として(岡田和生グループに)情報を要求する権利がある」とのアドバイスを受けていた
- ユニバーサルエンターテインメントグループは2022年9月に岡田和生グループからオカダマニラを取り戻したあとも、必要な手続きを進めてこなかった
- 26Capitalは、裁判所からユニバーサルエンターテインメントグループに対して、合併契約で約束した所定の手続きを速やかに完了するよう命じることを求める
訴状の要旨からわかるように、26Capitalの主張は「これまでオカダマニラの上場が実現に至っていない原因は、必要な手続きを先送りしてきたユニバーサルエンターテインメントグループにある」といった論調です。これだけ読めば、「26Capitalが訴訟に動くのも無理はない」、そんな感想になるやもしれません。
しかし、両者の不和は26Capitalが言うほど単純な構図ではありませんでした。この不和の根幹には、ある問題が潜んでいたのです。まずは次の相関図をご覧ください。