2021年になってから、ユニバーサルエンターテインメントは経営戦略の分野において大きなプランを公表した。同社グループがフィリピンで運営するIRリゾート「オカダマニラ」の事業を、米国の証券取引所に上場させるのだという。この記事では、ユニバーサルエンターテインメントの動向を数年に渡って考察してきた立場から、この上場プランについていくつかの見解をつづってみる。
岡田和生氏が上場プランを妨害してきた事実
ここでひとつ重要なことにふれておくと、ユニバーサルエンターテインメントがIRリゾート事業・オカダマニラの上場手続きに本腰を入れるのは、今回がはじめてのことではない。2018年には、同事業を米国ではなく、フィリピンの証券取引所に上場させるべく、手続きを進めていた。しかし、結局このプランは実現しないまま、いまに至っている。
――なぜか?
要因のひとつとして挙げられるのは、2017年にユニバーサルエンターテインメントグループから追放された岡田和生氏が上場に反対し、さらには妨害行為を繰り返してきたことだ。氏は、現地のメディアに報道されただけでも、都合4回、フィリピンの証券取引所やその関係会社に向けて書簡を送ったことがわかっている。
フィリピンでの上場プランをめぐるいざこざ

こういった行動をとってきた岡田和生氏が、フィリピンでの上場にだけ反対して、米国での上場には反対しないというのはなかなか考えにくいだろう。となると、水面下で進む米国での上場プランの成否をにぎるのは、想定される妨害工作に対して、ユニバーサルエンターテインメントが何かしらの対策を立てているのかどうか。この点にあると言えるかもしれない。
上場に反対する「奇妙」――その裏にある狙いは何か
それにしても奇妙なのは、「なぜ岡田和生氏は上場手続きを妨害するのか」という点だ。
そもそも上場の構想は、従前からあった話にすぎない。2010年――つまり、氏がまだユニバーサルエンターテインメントグループで会長職を務めていた時代に開催された同社の株主総会では、会社の方針としてたしかにこうアナウンスしている。
「カジノリゾート事業(マニラベイリゾーツ)について」の動画から
将来的にはこのフィリピンにおけるカジノの運営会社を香港証券取引所に上場させることを検討しております
つまり、言うなればIRリゾート事業の上場はずっと前からの既定路線であり、ユニバーサルエンターテインメントにいまも残る経営陣は、当時の方針を堅持しているだけだ。ここで方針を覆さなければならないような理由も、とくにはない。
また、上場が実現すれば、岡田和生氏にとっても本来悪くない話だと言える。岡田和生といえば、岡田一族のプライベートカンパニー・オカダホールディングスを通じて、ユニバーサルエンターテインメントの株式を保有する立場でもある。オカダマニラが上場によって調達した資金を別の投資機会に充てて、さらなる収益を上げられれば、氏も株主の立場で恩恵にあずかれるのは間違いないだろう。これほど上場阻止に固執するのは、まるで合理性に欠けているとしか言いようがない。
ただ、これまでユニバーサルエンターテインメントについて、ずっと昔のことまで調べてきた立場から言えば、執拗に妨害を続けてきた岡田和生氏の狙いを説明できる要因として、ひとつだけ考えられることがある。それは、氏が「もっと個人的な利益」を追求しようとしている可能性だ。
これは、あくまでひとつの可能性にすぎない。しかし、単なる憶測というわけでもない。
話は、ユニバーサルエンターテインメントがまだ、「アルゼ」という社名を使っていたころまでさかのぼる……。
(つづく)
シリーズ記事一覧
- 「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(1)
- 「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(2)(※当記事)
- 「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(3)(後日公開)