遊技機メーカーとして知られるユニバーサルエンターテインメント社と、その創業者である岡田和生氏に関わる一連のトピックを追いかけております。 ​

ユニバーサルエンターテインメントの経営騒動に潜む闇

渦中のユニバーサルエンターテインメント

【深堀り】「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(2)

2021年になってから、ユニバーサルエンターテインメントは経営戦略の分野において大きなプランを公表した。同社グループがフィリピンで運営するIRリゾート「オカダマニラ」の事業を、米国の証券取引所に上場させるのだという。この記事では、ユニバーサルエンターテインメントの動向を数年に渡って考察してきた立場から、この上場プランについていくつかの見解をつづってみる。

前回の記事はこちらから

岡田和生氏が上場プランを妨害してきた事実

ここでひとつ重要なことにふれておくと、ユニバーサルエンターテインメントがIRリゾート事業・オカダマニラの上場手続きに本腰を入れるのは、今回がはじめてのことではない。2018年には、同事業を米国ではなく、フィリピンの証券取引所に上場させるべく、手続きを進めていた。しかし、結局このプランは実現しないまま、いまに至っている。

――なぜか?

要因のひとつとして挙げられるのは、2017年にユニバーサルエンターテインメントグループから追放された岡田和生氏が上場に反対し、さらには妨害行為を繰り返してきたことだ。氏は、現地のメディアに報道されただけでも、都合4回、フィリピンの証券取引所やその関係会社に向けて書簡を送ったことがわかっている。

フィリピンでの上場プランをめぐるいざこざ

2018
2018-09-11

「IRリゾート事業はフィリピンで上場」との方針が打ち出される

ユニバーサルエンターテインメントはこの日、フィリピンの上場企業・Asiabest Groupの株式を取得し、グループ化すると発表。あわせてAsiabest Groupを買収する狙いについて、「IRリゾート事業の上場が目的である」と説明した。ユニバーサルエンターテインメントは、同社グループのIRリゾート事業をAsiabest Groupと統合して、フィリピンの証券取引所に上場させようとしていたと考えられる。こういったアプローチは「バックドアリスティング」と呼ばれるもので、フィリピンの株式市場ではめずらしくない。

2018-09-13

岡田和生氏がフィリピンの証券取引所に書簡を送る

現地の報道によれば、この書簡に岡田和生氏がしたためた主張は、次のような内容だという。

岡田和生氏の主張

  • ユニバーサルエンターテインメントグループによるAsiabestの株式取得は違法な契約
  • このような取引を進める権限がユニバーサルエンターテインメントグループにあるか、ここには法的な論争がある
  • 私は(ユニバーサル陣営の)大株主なのに、この取引について一度も相談を受けていない
  • Asiabestはこのこと(法的な論争の存在)を開示する義務がある

また、この書簡のなかで岡田和生氏は、「株式購入契約を締結した責任者に対して訴訟を起こす」と警告。あわせて、すでに2018年8月29 日付けでユニバーサルエンターテインメントグループの関係者複数名に対して訴訟を提起したことも併記している。この訴訟は、おそらく訴訟(G)のこと

2018-09-17

岡田和生氏がフィリピンの証券取引所に2通目の書簡を送る

現地の報道によれば、書簡のなかで岡田和生氏は、ユニバーサルエンターテインメントグループによるAsiabest Groupの買収について、Capital Markets Integrity Corporationを通じて調査するよう求めている。Capital Markets Integrity Corporationは、市場参加者の規制および監督を担当する組織。

2018-09-21

岡田和生氏がフィリピンの証券取引所に3通目の書簡を送る

この書簡の内容は、Asiabest Groupの情報開示が不十分だとして、岡田和生氏から証券取引所に徹底調査を要請するようなもの。報道によれば、次のような主張が記されていたという。

岡田和生氏の主張

  • ユニバーサルエンターテインメントグループによるAsiabest Groupの株式取得の契約は、無効になる可能性がある
  • Asiabest Groupはこの点を世間に警告しなければならない

また、この書簡のなかで岡田和生氏は、「このような株式取得はユニバーサルエンターテインメントグループにとって不利益となるため、絶対に同意しない」といった言葉もつづっていた。

2018-12-09

Asiabest Groupの株式を保有する個人株主がSECに申し立て

Asiabest Groupの株式を持つ「Carnelll Valdez」なる人物が、SEC(=証券取引委員会)に対して、ユニバーサルエンターテインメントグループによるバックドアリスティングの計画を中止させるよう要請した。要請をした理由についてこの人物は、「株式取得に関する情報開示が不十分で、証券規制法に違反した疑いがある」と主張しており、話の類似性やタイミングからいって、岡田和生氏の息のかかった人物である可能性は否定できない。そのため、ここに掲載した。

2018-12-11

SECはAsiabest Groupの個人株主から出ていた申し立てを却下

当局は、ユニバーサルエンターテインメントグループに対して、岡田和生氏との紛争に関する事実関係や状況を開示するよう命じたものの、個人株主から出ていたバックドアリスティングの中止要請は却下した

2019
2019-01-11

岡田和生氏がフィリピンの証券取引所に4通目の書簡を送る

再三書簡を出してきたにもかかわらず、望むような成果が得られなかったためか、この書簡で岡田和生氏はズバリ「IRリゾート事業の上場を阻止するよう」証券取引所に要請した。報道によれば、氏の主張は次のような内容。

岡田和生氏の主張

  • IRリゾート・オカダマニラのバックドアリスティングは許可していない、この手続きに反対している
  • 自分がユニバーサルエンターテインメントグループの取締役から解任されたのは無効な手続き
  • (代表取締役)富士本淳氏をはじめとした経営陣は、ユニバーサル陣営の正当な取締役・役員であるかどうかについて、少なくとも重大な問題(≒法的な争い)が存在する
  • 証券取引所はユニバーサルエンターテインメントグループによるAsiabest Groupの株式取得契約を不承認とし、バックドアリスティングも認めるべきではない

もっとも、のちのち出てきた訴訟の結果などを見ればわかるようにこれら岡田和生氏の主張がデタラメにすぎなかったことは言うまでもない

しかし何にせよ、岡田和生氏の執念深さたるや、すさまじい。この日の少し前、1月4日にはフィリピンで自分自身に逮捕状が出たにもかかわらず、そんなことおかまいなしにこうして妨害を続けるのだから。

2019-02-04

ユニバーサルエンターテインメントグループによるAsiabest Groupの株式取得が完了

この日、ユニバーサルエンターテインメントは、2018年9月11日にアナウンスしていたAsiabest Groupの株式取得手続きが完了したと公表した。ただし、これ以降この件に関する目立った進捗はなく、フィリピンでの上場プランは事実上、凍結した状態にある。

こういった行動をとってきた岡田和生氏が、フィリピンでの上場にだけ反対して、米国での上場には反対しないというのはなかなか考えにくいだろう。となると、水面下で進む米国での上場プランの成否をにぎるのは、想定される妨害工作に対して、ユニバーサルエンターテインメントが何かしらの対策を立てているのかどうか。この点にあると言えるかもしれない。

上場に反対する「奇妙」――その裏にある狙いは何か

それにしても奇妙なのは、「なぜ岡田和生氏は上場手続きを妨害するのか」という点だ。

そもそも上場の構想は、従前からあった話にすぎない。2010年――つまり、氏がまだユニバーサルエンターテインメントグループで会長職を務めていた時代に開催された同社の株主総会では、会社の方針としてたしかにこうアナウンスしている。

「カジノリゾート事業(マニラベイリゾーツ)について」の動画から

将来的にはこのフィリピンにおけるカジノの運営会社を香港証券取引所に上場させることを検討しております

引用元:事業報告書(株主通信)株主通信 -第37期のご報告-

つまり、言うなればIRリゾート事業の上場はずっと前からの既定路線であり、ユニバーサルエンターテインメントにいまも残る経営陣は、当時の方針を堅持しているだけだ。ここで方針を覆さなければならないような理由も、とくにはない。

また、上場が実現すれば、岡田和生氏にとっても本来悪くない話だと言える。岡田和生といえば、岡田一族のプライベートカンパニー・オカダホールディングスを通じて、ユニバーサルエンターテインメントの株式を保有する立場でもある。オカダマニラが上場によって調達した資金を別の投資機会に充てて、さらなる収益を上げられれば、氏も株主の立場で恩恵にあずかれるのは間違いないだろう。これほど上場阻止に固執するのは、まるで合理性に欠けているとしか言いようがない

オカダホールディングスはユニバーサルエンターテインメントの親会社

ただ、これまでユニバーサルエンターテインメントについて、ずっと昔のことまで調べてきた立場から言えば、執拗に妨害を続けてきた岡田和生氏の狙いを説明できる要因として、ひとつだけ考えられることがある。それは、氏が「もっと個人的な利益」を追求しようとしている可能性だ。

これは、あくまでひとつの可能性にすぎない。しかし、単なる憶測というわけでもない。

話は、ユニバーサルエンターテインメントがまだ、「アルゼ」という社名を使っていたころまでさかのぼる……。

(つづく)

シリーズ記事一覧

  1. 「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(1)
  2. 「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(2)(※当記事)
  3. 「オカダマニラ上場」――この計画は結実なるか?(3)(後日公開)

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