渦中のユニバーサルエンターテインメント

「オカダマニラ事件」の余波 このトラブルも岡田和生氏の狙いだったのか?

岡田和生氏とその一派がフィリピンのリゾート施設・オカダマニラを不法に接収した2022年5月31日の事件は、ユニバーサルエンターテインメントグループにもうひとつまったく別のトラブルをもたらす契機になっていました。事件をきっかけにして起きたトラブルは、ユニバーサルエンターテインメントが6億米ドル超の事業資金を調達するために発行していた私募債をめぐるもの。私募債を引き受け、資金の出し手となった投資家に言わせると、オカダマニラで起きた事件は「契約書で定めていた重大なイベントにあたる」とのことで、ユニバーサルエンターテインメントが当該私募債の買い戻しを迫られる事態になっています。

ユニバーサルエンターテインメントの私募債をめぐる構図

「岡田和生の関与はない」という取り決めだった

私募債をめぐる問題は、香港の裁判所から開示された書面を通じて明らかになりました。この書面では、香港の裁判所が私募債に関連して、ユニバーサルエンターテインメントの言いぶんを認める形で差止め命令を下したこともわかっています。命令により、投資家サイドは債権者としての請求権を行使できなくなっていますから、ひとまず強制執行のような手立てに出ることはできません。両者の対立は、小康状態にあると言えるでしょう。ただ、今後の展開次第では事態が急変するリスクも残っています

そもそもなぜユニバーサルエンターテインメントと投資家の間でこんなトラブルが生じたかといえば、私募債の契約書において、岡田和生氏の処遇に関連した約束ごとがあったためです。

  • (数々の不正に手を染めてきた)岡田和生がユニバーサルエンターテインメントグループの経営に関与することはない
  • もし万が一そんなことがあれば、債券の買い戻しに応じる
  • だからどうぞ安心して私募債に投資してくださいね

と、こんなふうに。

ところが後日、話はややこしいことになりました。2022年5月31日に事件を起こした一団が、「今後は岡田和生氏がオカダマニラのCEOに復帰して、経営を指揮する」「これはフィリピンの最高裁判所が認めたことだ」と喧伝したのです。

オカダマニラ事件の顛末をおぼえている人ならご存知のように、先立ってフィリピンの最高裁判所から岡田和生氏の処遇に関する命令が出ていたことは事実です。ただし、その命令で岡田和生氏にオカダマニラの経営権を与えたり、取締役会を組織する権利を与えたりしたわけではありませんでした。

岡田和生氏の処遇に関連して、フィリピンの最高裁判所からどんな命令が出て、オカダマニラの事件にどうつながっていったのか。このあたりの経緯と詳細については、下記の記事をご覧ください。

オカダマニラ外観
【情報メモ】「オカダマニラ占拠」の経緯と変遷

いつもと同じように営業を続けていたリゾート施設の中枢に、徒党を組んだ集団が突如乗り込み、施設一帯を一気に占拠した――。まるで事情を知らない人が聞けば、漫画やドラマのワンシーンを思い浮かべそうな話ですが ...

したがって、結局のところオカダマニラを乗っ取った一団の主張はまやかしにすぎなかったのですから、事件の発生をもって私募債の契約に問題が生じると判断した投資家サイドの行動は早合点になるのでしょう。事実、前段でふれたように、香港の裁判所はユニバーサルエンターテインメントグループにとって有利な差止め命令を下し、投資家サイドから出た私募債の買い戻し要求をひとまず突っぱねました。

しかしだからといって、ここで話は終わりません。このトラブルには、まだ続きがあります。

もしも岡田和生氏が返り咲くならば

このトラブルにおいて最も重要なポイントは、オカダマニラの事件が解決したいまも、岡田和生氏の処遇についてはフィリピンの最高裁判所で再審議のさなかにある、という点です。つまり言い換えれば、今後、最高裁判所から出る鶴の声ひとつで岡田和生氏が実際に返り咲き、ユニバーサルエンターテインメントは私募債の買い戻しを余儀なくされる――そんな可能性もないとは言い切れないのです。

ユニバーサルエンターテインメントの置かれた状況を例えるなら、大きな不発弾を処理できずに抱えているようなものです。これまで明らかになってきた経緯や事実をふまえれば、岡田和生氏が返り咲く可能性は限りなく低いと考えられますが、もしも正反対の結論が出れば一巻の終わり。ユニバーサルエンターテインメントは、投資家が求めている私募債の買い戻しに応じなければならなくなるのですから。

私募債を通じてユニバーサルエンターテインメントが調達した資金は、年率8.5%もの金利を約束してようやく確保したものです。その代わりを見つけるとなれば、相当厳しい道のりになるでしょう。また、もしも私募債に代わる資金を用意できないとなれば、あらかじめ約束していた担保を差し出すことになるリスクもあります。私募債の契約において担保になっているものが何かといえば、それはTiger Resort Asia社とBrontia社というふたつの子会社の株式です。両社はオカダマニラの事業と密接に関わる会社ですから、これらの株式をユニバーサルエンターテインメントが失うとなれば、その影響は計り知れません。


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