岡田和生の現在(いま)と過去

岡田和生グループは凶行に打って出なければならなかったのかもしれない

岡田和生氏の意向を受けたフィリピン人たちが、オカダマニラを力ずくで奪うといった大胆な行動に出てから、早1ヶ月。これまでのところ、引き続き岡田和生氏たちの目的や狙いについてははっきりとしませんが、動機として考えられることがないわけでもありません。そのひとつは、「彼らは、米国の法律――たとえば『海外腐敗行為防止法』――を恐れているのではないか」というものです。

「オカダマニラの米国上場」がもたらすもの

フィリピンで起きたことなのに、そこになぜ米国の法律が絡んでくるのか? これは、ユニバーサルエンターテインメントグループがオカダマニラの上場手続きを進めてきたことと関係します。

重要なポイントは、「たとえ米国外に所在する企業であっても、米国の証券取引所に上場した時点で、その企業は米国の証券取引所法の適用対象になる」という点です。つまり、予定通り手順をふんで、オカダマニラが米国の証券取引所に上場すると、もし仮に、米国の法律に照らして問題になる話がオカダマニラにあるとわかった場合、米国の証券取引委員会(=いわゆるSEC)や司法省などから法令違反を問われることになるのです。

こうした変化から生じる影響は、決して小さなものではありません。たとえば、次の2点は、岡田和生氏と、氏の意向を受けてオカダマニラの強奪を実行したフィリピン人たちにとって、無視できないものになると考えられる代表格です。

米国の上場企業に関わる法律の代表格「FCPA」

FCPAは、外国公務員への贈賄を防止することを目的とした連邦法。

この法律は主に、外国の公務員に対して贈賄行為をしてはならないと定めた「贈賄禁止条項」と、各企業に対して正確かつ適正な会計処理を義務づけた「会計条項」から構成されている。

前者の贈賄禁止条項は域外適用――平たく言えば、米国の外で実行した贈賄も摘発の対象になるところが特徴で、実際これまでさまざまな国で実行された贈賄が摘発対象になってきた

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他方、会計条項については、帳簿上で賄賂の類を正当な支払いであるかのように見せかけていた場合も条項違反と見なすところが特徴。ゆえに、贈賄禁止条項にはあたらない、と見られるケースでも、会計条項違反だとして摘発対象になることがある

なお、FCPAの正式名称は「The Foreign Corrupt Practices Act of 1977, as amended, 15 U.S.C. §§ 78dd-1, et seq」で、日本語では「海外腐敗行為防止法」などと呼ばれる。

参考:CRISIS MANAGEMENT NEWSLETTER 2020年12月号(Vol.15)

内部告発者報奨金プログラム

内部告発者報奨金プログラムは、2010年に制定されたドッド・フランク法を通じて導入に至ったもの。その名が示すように、このプログラムでは、法律に違反していると考えられる企業の内部情報を、米国証券取引委員会などの関連当局に届け出た人に対して、報奨金を支払うと約束している(※ただし諸条件はある)。

このプログラムで対象になるのは、企業に関するさまざまな不正行為。上で取り上げたFCPA違反もそのひとつで、これまで実際にさまざまなケースで報奨金が支払われてきた。

米国企業の不正、内部告発増える 情報提供者への報奨金最高、日本は通報環境の整備課題 - 日本経済新聞
米国企業の不正、内部告発増える

米国で内部告発による企業不正の摘発が増えている。米証券取引委員会(SEC)が2020会計年度(19年10月~20年9月)に告発者に払った報奨金は前年度比3倍の1億7500万ドル(約183億円)と過去最 ...

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参考:米国ドッド・フランク法における内部告発者報奨金プログラムの展開と課題

岡田和生氏たちにとっての死活問題

岡田和生氏については、ユニバーサルエンターテインメントグループから横領した資金の一部を、ディンド・エスペラータ氏(=このたびの事件で実行役になったフィリピン人のひとり)と、彼の率いる会社に横流ししていたとわかっています。

それに、岡田和生氏は過去にこんな発言もしていました。

「今回、判事に3億円払っているよ」

(※発言を記録した音声は動画を参照)

これらが何のための支払いだったのか、そこはまだわかりません。しかし、こういったものが想像通り「表に出せないカネ」だったとすれば、彼らにとってオカダマニラの米国上場は脅威になると言えるでしょう。もし上場手続きが済めば、過去の悪事が何かの拍子で表沙汰になる、なんてことも考えられるのですから。

こういった具合に考えると、岡田和生氏たちの行動はある種、必要にかられたものだったと推測できそうです。要するに、彼らがオカダマニラを力ずくで奪い取ったのは、オカダマニラの上場阻止を阻止するため――もっといえば、米国の司法当局に介入される可能性を事前に摘みとっておくためだったのではないか、と考えられるわけです。




2022年6月29日になって、ユニバーサルエンターテインメントはオカダマニラの米国上場手続きを後ろ倒しにすると発表しました。

従来のスケジュール

合併を承認するための26capitalの株主総会 2022年6月28日(米国時間)
合併を承認するためのUERIの株主総会 2022年6月28日(フィリピン時間)
合併の実行 2022年6月末まで

引用元:(開示事項の経過)当社子会社が米国証券取引委員会に提出したForm F-4の効力発生に関するお知らせ

新たに発表されたスケジュール

合併を承認するための26capitalの株主総会 未定
合併を承認するためのUERIの株主総会 未定
合併の実行 2022年9月末まで

引用元:(開示事項の経過)当社子会社の合併(De-SPAC)の契約期限延長及び合併スケジュール変更に関するお知らせ

少なくともこれまでのところは、岡田和生氏たちのもくろみ通り、といった状況にあるのかもしれません。


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