アントニオ・コアンコ氏と岡田和生氏が出会い、交わるきっかけになった土地問題。この件についてつぶさに調べるなかで浮かんだ、ひとつの疑問があります。
それは、
というものです。
いまさら何を言い出すのか。そんなふうに思われるかもしれません。しかし、根拠はあります。
着目したのは、土地問題に関連してパートナー候補になったFirst Paramount Holdings 888社の出資にまつわるトラブルです。一時は土地問題に関連して岡田和生氏たちと契約まで交わした同社が、あとになってこの契約から一方的に手を引いた理由は、次の報道で説明できると考えられます。
フィリピンのニュースサイトから
Laude was sued for an aggregate income tax liability covering taxable year 2013 amounting to P21.98 million, including surcharges and interests.
意訳:Philip Tay Laudeは、2013年の課税年度を対象とした、課徴金と利息を含む総額2198万フィリピンペソの所得税債務について訴えられた。
Laude’s case stemmed from a preliminary investigation conducted by the BIR on his alleged perpetration of tax evasion schemes.
意訳:事件は、脱税の疑いで内国歳入庁が実施した予備調査に端を発している。
BIR investigations showed that Laude made several investments in 2013 amounting to P50.66 million with Timson Securities, Inc.; Emperor’s 168 Palace, Inc.; and First Paramount Holdings 888, Inc.
意訳:内国歳入庁の調査によると、Philip Tay Laudeは2013年にTimson証券社、Emperor’s 168 Palace社、First Paramount Holdings 888社に対して、合計5066万ペソにものぼる資金を投じていたことが判明した。
Records from the BIR, however, showed that he only declared earnings of P741,000 in 2013.
意訳:しかし、内国歳入庁の記録によると、彼は2013年に74万1,000ペソの利益しか申告していないことがわかった。
His wife, Marissa Laude, was also charged by the BIR with tax evasion last May 22 for making substantial investments which exceeded her reported income.
意訳:彼の妻のMarissa Eduardo Laudeも先月22日、申告所得を上回る多額の投資を実行したとして、内国歳入庁から脱税の罪で起訴されている。
重要な事実は、First Paramountt Holdings 888の出資者が、2013年に手にした収入の数十倍にものぼる資金を、同じ年に同社などへの投資に充てていたこと。状況からいって、出資者本人とは別に、パトロンのような存在――つまり誰かしら資金の出し手がいたと考えるのが自然でしょう。
では、そのパトロン役は誰か――? ズバリ、その候補者として極めて疑わしいのが、岡田和生氏です。なぜなら、彼らは顔見知り……いやそれどころか、宴席を設けるくらいの間柄なのですから。
表向きは法律遵守(※外国人および外国法人が会社を持つ場合は所有権の40%まで)のためにもフィリピン人が会社に出資しているように装いつつ、裏ではそのフィリピン人と何かしら契約のようなものを交わし、実際の権利は自分の手中におさめようとした。ところが、そのフィリピン人に対して、内国歳入庁から事前に所得や税金に関するヒアリングがあったために、そこから岡田和生氏たちは土地関連の全体像が明るみになることを恐れて、締結していた契約を取りやめることにした。――こんなふうに考えれば、タイミングからいってもつじつまは合います。
First Paramountt Holdings 888関連の時系列
日付 | 動き |
2013年11月1日 | First Paramountt Holdings 888を交えた3者間で土地関連の契約がまとまったとユニバーサルエンターテインメントが発表 |
2013年12月15日 | First Paramountt Holdings 888が近く取引をまとめるとの報 |
2014年3月28日 | First Paramountt Holdings 888が契約から手を引いたとわかる |
2014年6月5日 | First Paramountt Holdings 888の出資者に「脱税」の報道 |
参考
フィリピンでそれ公言するとアンチダミー法に引っかかるのでご注意を。
— Sasaki Yu@やきとり屋の経営者 (@beck_sasaki) July 19, 2018
フィリピンの事業の進展とともに、値上がりが見込める土地。その権利に絡んだ会社を実質的に自分のものにしておけば、岡田和生氏にとっては濡れ手に粟です。フィリピンの事業は、もともと何もないような土地からスタートしているとあって、莫大な利益を生み出すと見込まれますから、動機としても十分でしょう。
Tonyboy=ダミーという可能性
さて、こうなってくると、当然同じような疑問が浮かびます。「アントニオ・コアンコ氏がEAGLE IIの株式を買い受けるために投じた資金は岡田和生氏から拠出したものではないか」「ふたりの間に、何か裏で交わした契約がありえるのではないか」と。
実際、奇妙なことはいくつかあります。
Q1. 株式譲渡の事実は岡田和生氏とその周辺だけが把握していた?
- 2015年5月15日に出た「子会社の異動に関するお知らせ」を読むとわかるように、ユニバーサルエンターテインメントグループからアントニオ・コアンコ氏に土地関連の株式を譲渡したのは平成26年11月4日(=2014年11月4日)
- つまり、この文書を公表する半年前にはすでに株式譲渡が済んでいた
- なぜ、これほど事後的な発表になったのかといえば、その点はこの株式譲渡が子会社の取締役会のみで決議されている(※「子会社の異動に関するお知らせ」の末尾を参照)ことから読み解ける
- 当時、土地関連の株式は海外に所在する子会社が所有していた
- そしてこの子会社も含めた海外事業全般を統括していたのが、誰あろう岡田和生氏
- つまるところアントニオ・コアンコ氏との話は、岡田和生氏が決めたものと見て間違いない
- そのほかの取締役は関与できなかったどころか、この件を把握すらできていなかったために、決算をまとめ上げる過程でようやく株式の譲渡があったことを知ったと考えられる
- 当サイトからユニバーサルエンターテインメントのIR窓口に「株式を譲渡するにあたって相手方のデューデリジェンス(調査)はしたのか」とたずねたところ、会社の回答が「簡単なデューデリジェンスはあったようです」というあいまいなものになったことも、これらの見方を裏づける
Q2. Tonyboyの会社は経営の実態がない?
- 最終的に土地関連の株式を引き受けたアントニオ・コアンコ氏率いるALL SEASONS HOTELS & RESORTS社は、かつてパートナー候補になっていたRobinson Land社やCentury Properties Group社などが歴史や実績を備えていたのと対照的に、ほぼ無名の会社
- 実績がなければノウハウもないのであり、なぜここをパートナーにすると決めたのか、釈然としない
- ALL SEASONS HOTELS & RESORTSについて調べていたところ、某所のデータベースに登録された同社の電話番号が、とある弁護士の関連会社とまったく同じものだったことは確認できている
- 会社の管理を弁護士に任せているとすれば、同社は単に株式を買い受けるために用意されたシェルカンパニーにすぎない可能性が高い
- また、アントニオ・コアンコ氏は過去に「(オカダマニラの敷地内に残る遊休地を使って)ホテル、住宅タワー、オフィスビル、オペラハウスなどの開発を支援する計画がある」などと語っていたが、これらについてユニバーサルエンターテインメントに問い合わせたところ、「いずれも実現していない」とのこと
Q3. TonyboyとFirst Paramountt Holdings 888につながり?
- アントニオ・コアンコ氏は、岡田和生氏たちがパートナー探しをしていると知った時期について、2014年3月だと現地メディアに答えている
- これはFirst Paramountが契約から手を引いたタイミングとまったく同じ
- また、アントニオ・コアンコ氏は、フィリピン人を通じて岡田和生氏の事業計画を知ったようであることも興味深い
- 奇遇にも、彼はFirst Paramountt Holdings 888の出資者たちと交流があり、誕生日パーティーにまで出席するような仲だと確認できている
もちろん、これらはあくまで仮説です。しかし、これだけの状況証拠はあるのです。果たしてアントニオ・コアンコ氏が土地関連の株式を取得するにあたって拠出した資金に、岡田和生氏が関与していないと言い切れるものでしょうか?
なお、参考までにふれておくと、もし本当に、土地に関連した会社の株式の実質的な所有者が岡田和生氏になっているのなら、それは「フィリピン人と内国企業にのみ認められている権利を、外国人が手にすることを禁じた」アンチダミー法に抵触する行為です。話を持ちかけた岡田和生氏はもとより、それに加担したフィリピン人――アントニオ・コアンコ氏もまた、刑罰の対象になります。
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