岡田和生氏による不正行為については、ユニバーサルエンターテインメント(UE社)と利害関係のない弁護士3名からなる特別調査委員会が、調査結果を出しています。調査結果が公になったのは2017年8月30日のこと。不正行為と認められたのは合計3件で、いずれの件でも岡田和生氏が関係各社を通じて、自己の利得を上げたと指摘しています。
CHECK
不正は3件 証拠もそろう
調査結果が指摘するのは、
【A】
【B】
【C】
という3つの問題。特別調査委員会は3つの問題それぞれについて、当事者間でやりとりされた携帯電話のショートメッセージや、パソコンのデータ、さらに契約書や各種議事録、銀行の取引履歴といった公平性のある証拠と、関係者の証言を用いながら、問題の経緯をつまびらかにしています。
日本円にして20億円という多額の送金
とくに注目すべきは、【A】の不正な貸付けです。
おおよそ適切とは言い難い時期に、適切とは言い難い人物と多額の送金をやりとりしているのです。しかもその結果、ユニバーサルエンターテインメントは多額の損失を抱えることになっています。
【A】の問題は、岡田和生氏が立ち上げた香港の法人、Okada Holdings Limited(=オカダホールディングス / OHL)から第三者に、1億3500万香港ドルを貸し付けたことから始まりました。貸付先の第三者にあたる人物は、李堅(Li Jian)氏。氏はシステム開発会社のSJIを立ち上げ、ジャスダック市場への上場まで果たしたものの、のちに架空取引などの不正に手を染めていたことが発覚して、SJIの代表取締役を辞任しています。
李堅氏による架空取引が公になったのは、2014年10月10日。
SJI社のリリースから
この度、当社の過年度取引の一部について不適切な取引およびそれに伴い誤った会計処理が行われた可能性があるなどの疑義が発生いたしました。これを受け、本日開催の取締役会において本件の事実確認、原因の究明等を目的として、下記のとおり第三者委員会を設置することを決議いたしましたので、お知らせいたします。
引用元:第三者委員会設置に関するお知らせ
そして岡田和生氏がオカダホールディングスから李堅氏に1億3500万香港ドルを送金するよう指示したのは、2014年11月24日ごろでした。
特別調査委員会の報告書から
「乙」は岡田和生氏、「丁1」は李堅氏、「丙1」は岡田和生氏の部下のこと。乙は、平成26年11月24日、丁1の催促によりローン契約書を作成する前に送金することを決め、丙1に対し、1億3500万香港ドルを送金するよう指示した。
つまり、SJIで李堅氏の不正が発覚して調査が進められているさなかに、岡田和生氏は李堅氏への送金を指示していたことになるのです。しかも貸し付けた1億3500万香港ドルの貸付期間は契約締結から36ヶ月で、利息については無利息という破格の条件になっています。
そして本題はここから。先の貸し付けから2ヶ月ちょっと経った2015年2月ごろ、岡田和生氏は部下に新たな送金を指示します。TRAから李堅氏に20億円(=香港ドルにして1億3500万香港ドル)を送金して、先にオカダホールディングスから李堅氏に貸し付けていた1億3500万香港ドルを回収せよ、というのです。回収した資金は美術品の購入に充てる、ともいいます。
特別調査委員会の報告書から
「乙」は岡田和生氏、「丁1」は李堅氏、「丙1」は岡田和生氏の部下のこと。UEからTRAの口座に1億6816万4000米国ドルが送金されるのと前後して、乙は、丙1に対し、「TRAから丁1に20億円送金させ、丁1からA社に返済してもらいたい」などと言い、TRAの資金を丁1に送金し、その資金を使ってA社から丁1に貸し付けた1億3500万香港ドルを返済させるように指示した。
乙から丙1に対するSMS「申し訳有りませんが、丁1さんを通じて、行ったジャンケット投資資金20億円、美術品の支払いを行いたい」
TRAの親会社であるユニバーサルエンターテインメントに断りなく、岡田和生氏個人の判断で送金を指示することは問題ですし、そもそもTRAの送金原資は、ユニバーサルエンターテインメントがフィリピンのカジノ事業に充てるためドイツ銀行から調達した資金であり、本来用途は限定されているという問題もありました。……それにもかかわらず、です。
氏の指示は結局、部下によって実行に移されます。2015年3月3日にTRAから李堅氏への1億3500万香港ドル(に相当する米ドル)の送金が済むと、続く3月4~13日にかけて、李堅氏からオカダホールディングスに合計1億3000万香港ドルの送金が実行されます。TRAから李堅氏へ1億3500万香港ドルを送ったのに対して、李堅氏からオカダホールディングスに送られたのは1億3000万香港ドル。差し引き500万香港ドルが宙に浮いた計算になりますから、この点も不可解です。調査結果によれば、この500万香港ドルについて、李堅氏は岡田和生氏の部下に「後日返す」と告げたとされていますが、いまだにオカダホールディングスに返済されておらず、使途もわかっていません。
特別調査委員会の報告書から
「丁1」は李堅氏、「丙1」は岡田和生氏の部下のこと。丁1は、丙1に対し、「残りの500万香港ドルは費消したので後日返す。」旨述べたが、いまだ返済されていない。
一連の送金によってオカダホールディングスが回収した資金は、まもなく岡田和生氏個人の美術品購入に充てられたことも指摘されています。
特別調査委員会の報告書から
「乙」は岡田和生氏、「丙1」は岡田和生氏の部下のこと。乙は、平成27年3月12日12時6分ころには、「申し訳ありませんが、G社と己1氏に美術品の支払い送金をお願いしたい」とのSMSと、「その為に私の日本のH銀行口座に887000円(原文ママ)をA社から送金をお願いします」とのSMSを、いずれも丙1に送信している。
一連の送金は、ユニバーサルエンターテインメントに対する背任行為に値する疑いがあります。
20億円のほとんどはいまだ返済されず
さらに、です。不正行為を巡る問題は、いまなお続いています。一連の送金が明らかになったあとの2017年7月3日に、岡田和生氏はロイターの取材に対して、「返済期日は11月になっている」「問題はない」と説明したものの、貸付金1億3500万香港ドルのほとんどは、いまだにTRAに返済されていません。
2017年7月3日付けのインタビューから
この問題について、和生氏はインタビューで、20億円はカジノで大金を賭ける顧客の紹介などをするジャンケット業務を拡大するために会社から受けた融資であり、返済期日は11月になっているとし、問題はないと説明した。
それどころか、李堅氏への送金窓口になった銀行口座を保有する英領バージン諸島の法人、 Goldluck Tech Limitedは2016年4月に解散しているというのが現実です。李堅氏に流れた1億3500万香港ドルはどこへ消えたのでしょうか?
2017年9月14日の記者会見から
岡田元会長は会見で、「20億円は、11月にも返済されるから問題はない」などと説明している。しかし、貸し付けた会社(本社はバージン諸島)の登記簿を調べてみると、すでに登記が抹消されている。20億円を回収するのは難しいとみられている。
2019年10月16日追記
ここで取り上げた不正3件【A】【B】【C】の流れなどをもっと知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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時系列で見る岡田和生氏の不正と手口
岡田和生氏が繰り返してきた不正行為を、時系列に並べて整理しました。 こうやって一覧すると、いかに氏がたびたびユニバーサルエンターテインメントグループから自分自身に、あるいは岡田家のプライベートカンパニ ...
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