ここまでを振り返る

ユニバーサルエンターテインメントへの復帰を目論んだ創業者の反撃と現実

会社から追い出された創業者と、創業者を追い出した経営陣の対立。ユニバーサルエンターテインメントで起きたいざこざが、こういった構図である以上、多くの人にとって関心ごとになるのは、「追い出された創業者と、残った経営陣の立場が、今後逆転する可能性はあるのか?」という点でしょう。

こうした疑問が、もっともなものであることは間違いありません。何しろ、岡田和生氏はいまだにユニバーサルエンターテインメントのトップに返り咲くことをあきらめていないのですから。

しかし、結論から言えば、「双方の立場は逆転しがたい」「逆転する可能性は限りなくゼロに近い」というのが実情です。このあたりのことは、これまで岡田和生氏がとってきた行動や、その結果などを見ていくと、よくわかります。

[Question]
岡田和生氏の復帰を阻むのは何か

まず、これまで岡田和生氏がユニバーサルエンターテインメントに復帰することを狙って取り組んできたことについてふれておくと、これらはほとんどすべて思い通りにいっていません。過去には氏が記者会見を開き、「自分が社長に復帰する」と宣言したこともありましたが、結局はこれも宣言だけに終わりました。

「会社を取り戻す!」追放されたパチスロ前会長が“気炎” | パチスロ最大手「大騒動」 | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」
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 パチスロ機メーカー最大手、ユニバーサルエンターテインメント(ジャスダック上場)の岡田和生・前会長(74)が、同社により設置された特別調査委員会(委員長、政木道夫・元東京地検検事)の報告書で「22億円 ...

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岡田和生氏にとって、いかんともしがたい問題になっているのは、息子の知裕氏が「オカダホールディングスの実権をにぎっていること」、そして「父親に敵対する姿勢を明確にしていること」です。

岡田和生氏がユニバーサルエンターテインメントのトップに返り咲くには、まずとにかく同社の親会社にあたるオカダホールディングスの実権を確保しなければならないのですが、それが知裕氏との関係で、難しい状態にあるのです。

オカダホールディングスはユニバーサルエンターテインメントの筆頭株主

Youtubeから

オカダホールディングスはユニバーサルエンターテインメントの筆頭株主

Youtubeから

「オカダホールディングスを制する者がユニバーサルを制す」という構造


ユニバーサルエンターテインメントの株式保有割合
【導入3】オカダホールディングスを巡る議決権争い

ユニバーサルエンターテインメント(UE社)の経営云々を語る上で重要なポイントが、その株主構成にあります。同社の発行する全株式のうち68%ほどを保有し、圧倒的な議決権を確保しているのは香港法人オカダホー ...

「岡田和生」といえば、ユニバーサルエンターテインメントの創業者であり、また同社の経営者および大株主として財をなした人物ですが、同社の株式は本人自ら保有しているわけではありません。オカダホールディングスという岡田一族のプライベートカンパニーを通じて、ユニバーサルエンターテインメントの株式を“間接的”に保有する形になっています。ですから、今回のように何らかのきっかけで岡田和生氏がオカダホールディングスの実権を失った場合、氏からユニバーサルエンターテインメントに及ぼす影響力はゼロになるのです。こちらの記事では、オカダホールディングスの株式を、岡田和生氏とその家族がどんな割合で保有しているか、などについて紹介しています。

岡田和生氏は、この状況を打開すべく、これまでさまざまな形でアプローチしてきました。しかし、それでも望むような結果にはつながらなかった、というのがこれまでのいきさつです。肝心の息子・知裕氏からは、まともな返答ひとつ得られていません。

これまで岡田和生氏がとってきた手立ての一例

  • オカダホールディングスの株主になっている息子と娘、妻に対して、持ち株を自分に売却するよう要請
  • オカダホールディングスの株主になっている娘・裕実氏を説得
  • オカダホールディングスの代表者は自分である旨を香港の登記所に申請

岡田和生氏は、香港の裁判所にさまざまな申し立てをしてきた

娘の裕実氏を味方につけたものの、それ以降めぼしい成果はない

「息子と会えたら1億円」といった企画まで立ち上げた




[Question]
なぜ、逆転はないと考えられるのか

これまで成果が出ていないとはいえ、岡田和生氏本人はユニバーサルエンターテインメントのトップに復帰することをあきらめていないのだから、ここから逆転する可能性がないとは言い切れない。そんな声もあるかもしれません。

しかし、ここには圧倒的な事実があります。「オカダホールディングスの実権は、今後2047年まで、知裕氏から他人の手に渡ることはない」という事実です。

この件については、その旨を定めた契約がありますし、その契約の有効性がすでに司法の場で認められたという結果もありますから、もはや岡田和生氏には手も足も出せない領域だと言えます。

少なくとも2047年までオカダホールディングスの実権は知裕氏に


最高裁判所
信託契約問題に決着 オカダホールディングスの実権は知裕氏に有り

岡田一族の資産管理会社・オカダホールディングスに関連して、岡田和生氏の息子・知裕氏が、妹の裕実氏と結んだ信託契約。この契約の有効性をめぐって続いてきた法廷闘争が、ついに終局をむかえました。 訴訟は「信 ...

知裕氏が父親に代わってオカダホールディングスの実権を確保できているのは、あらかじめ妹の裕実氏と株式に関する契約を結んでいたため。この契約については、後日、父親側についた裕実氏と、知裕氏との間で訴訟沙汰になったものの、2020年7月に「契約は有効なもの」という結論が出て、決着しています。こちらの記事では、訴訟の決着をレポートしました。

2047年ともなれば、岡田和生氏の年齢は100を超えています。これでもなお、氏の復帰について、議論の余地はあるものでしょうか?




また、知裕氏がこの先、父親に譲歩するようなこともありえません。なぜなら、父親の和生氏は、近く刑事責任を追及されるような立場にあるためです。

法律違反を犯した岡田和生氏が復帰すれば、会社は行き詰まりかねない

もしも、法を犯した人間が会社に復帰するとなれば、会社は混迷を極めます。そして、それは同時に、社員や取引先と、その家族を露頭に迷わせることも意味します。これまで知裕氏は、父親と決別することを決心し、行動してきたのです。土壇場で社会正義を無視する理由などないでしょう。




さらにもうひとつ、今後は、岡田和生氏に逆風が相次ぐと考えられることもあります。

逆風のひとつは、現在協議中の離婚が成立した場合、自分の持つオカダホールディングスの株式を、夫人に分与しなければいけなくなるかもしれないこと。もうひとつは、ユニバーサルエンターテインメントグループから岡田和生氏に対して請求している損害賠償の規模が大きいため、今後の判決次第では賠償金の代わりにオカダホールディングスの株式を差し出すことになりかねないこと、です。

岡田和生氏は巨額の損害賠償を請求されている


「680億円」の衝撃――岡田和生氏を襲う過去最大の賠償請求

680億円――。大半の人にとっては気の遠くなるような金額の請求を、岡田和生氏個人が受けることになりました。2017年6月に経営騒動が表面化してから、はや2年半。ここにきて、ユニバーサルエンターテインメ ...

こちらの記事では、ユニバーサルエンターテインメントグループから岡田和生氏に提起した損害賠償請求訴訟を取り上げています。同社と岡田和生氏の間では複数の訴訟がありますが、この訴訟の賠償請求規模は断トツです。

岡田和生氏の現状は、まるでロウソクのようではありませんか。いまは火をともせていても、やがて限界がくるのです。

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「これまでを振り返る」の記事一覧

  1. 創業者追放の真実(リンク)
  2. 岡田和生氏はどんな問題を起こしていたのか(リンク)
  3. ユニバーサルエンターテインメントへの復帰を目論んだ創業者の反撃と現実(※当記事)
  4. 岡田和生氏に見る「品格なき経営者」の危険性(リンク)

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