順不同
株主
株式会社が発行する株式を保有する人、あるいは法人のこと。保有株式数や、保有割合を見ることで、その個人なり法人なりが、どれほど多くの株式を保有しているか、理解できる。「オカダホールディングスは、ユニバーサルエンターテインメントの全株式のうち68%ほどを保有する」といった場合、過半数をおさえていることになり、ほかの誰よりも多くのユニバーサルエンターテインメントの株式を保有していることを意味する。
株式
会社を設立し、運営していくためには、資金が欠かせない。たとえば事務所を借りる費用。あるいは従業員などに支払う人件費。設備や品物を買うための費用もそう。こういった会社に必要な資金を出資した証として、株式会社から受け取るものが株式。株式には金銭的価値があり、この価格を株価という。ユニバーサルエンターテインメントの場合、東京証券取引所に上場しているので、同社の株式は日々、株主や投資家の間で売買されており、それにともない株価も常に変動している。
議決権
株式会社が示した経営方針などに対して、株主の立場から賛否や意見を示せる権利。議決権は原則、株式とセットになっており、株式の保有割合と比例して、権力が増していく。言いかえれば、株式会社が発行する全株式のうち、0.1%しか持たない株主より、1%保有する株主のほうが強い権利を持つということ。
議決権については、保有割合が一定数を超えるたび、特別な権利が付与されることも特徴として挙げられる。「3%以上の議決権を保有する株主であれば、株主総会の招集を請求できる」というのがその一例。この点は、ユニバーサルエンターテインメントの問題において、無視できないポイントになった。なぜなら、ユニバーサルエンターテインメントの議決権付き普通株式は、その過半数がオカダホールディングスのものであり、その割合は約68%にもなっているから。日本の会社法では、66%以上の議決権を保有している場合、株主総会の特別決議を単独で可決できることを意味しており、この特別決議には「取締役・監査役の解任」「定款の変更」も含まれる。つまり、もしも岡田和生氏の息子である岡田知裕氏が、父親の不正行為について見てみぬふりをした場合、岡田和生氏はオカダホールディングスを通じてユニバーサルエンターテインメントににらみをきかせたままになったので、社内で誰がどんな声をあげようとも、握りつぶされていたのである。
ストックオプション
会社が発行する株式を、定められた条件で取得できる権利。ここでいう条件については「あらかじめ定められた価格で株式を購入できる」というのが一般的で、株式の時価と無関係に有利な価格で株式を取得できるのがメリットになる。仮に1株あたり100円で取得できる権利を自社から付与された取締役がいたとして、将来的に自社の株価が500円になっていた場合、その差額が報酬になる。米国では、経営者が報酬の大半をストックオプションで受け取るケースも少なくない。この場合、会社の業績を伸ばして、株価がそのぶん上昇すれば、よりいっそう大きな報酬を受け取れることになる。
ただし、岡田和生氏がユニバーサルエンターテインメントの取締役会において取り上げたストックオプションは、報酬云々の話とは別物。自身にストックオプションを付与してもらい、それをまもなく行使することによって、保有株式を増やし、議決権の増加につなげる狙いがあったと見られる。
2017年5月23日の取締役会から
『岡田氏は、香港に設立した同族企業の実権を長男らに奪われた経過を長々と説明し、「どう対抗するかが今日の話だ」と周囲を見渡した。「極めて乱暴だが、乱暴でないと解決しない。私が筆頭株主になる」と延べ、ストックオプションの制度を利用して、ユニバーサル社の株式10%分を取得する権利を、自分に与えるよう要求した。』
しかも、岡田和生氏は取締役会の場で、価格などの条件面はさておき、とにかくストックオプションを自分に付与するよう迫ったと報じられている。条件をあらかじめ決めない、ということは、あとから「1株あたり1円で購入できる」といった破格の内容にすることもありえたということ。
※当時、ユニバーサルエンターテインメントの株価は1株あたり3500円前後
取締役会
株式会社において、業務執行に関する意思を決定するための機関。平たく言えば、会社の経営方針をはじめとした重要事項について取り決めるところ。定期的に開かれる会合、あるいは必要に応じて開かれる臨時会合に取締役が集まって、意思決定を下していく。
会合については毎回、議事録を作成することが義務づけられており、ユニバーサルエンターテインメントの場合、取締役会を毎回映像として記録しているもよう。毎日新聞の連載記事『パチスロ最大手「大騒動」』は、こうした映像がもとになっているものと思われる。
英領バージン諸島
イギリス自治領のひとつ。British Virgin Islands の頭文字をとって「BVI」と略されることが多い。カリブ海の群島で、60ほどの小島からなる。人口は2万人あまりで、国の規模としては小さく、観光以外にめぼしい産業がないものの、世界各地の資金を惹きつけてきた。その背景にあるのは、税制上の優遇措置。同島に籍を置き、特定の条件を満たした法人は、法人税が非課税になる。また、同島に籍を置く法人については、外部から詳しい登記情報を知ることが難しいというところも特徴。こうした点は、秘匿性を確保したい人々に好まれてきた側面がある一方、犯罪行為の温床になってきたとの指摘や批判も少なくない。ただし、2017年ごろから、情報開示の面は見直されつつある様子(※参考リンク)。
「兜町コンフィデンシャル」では、著者が実際にBVI籍のペーパーカンパニーを設立。その過程について詳しく綴っている。