去る2021年9月14日、日本では岡田和生氏の上告が棄却されたことで、ユニバーサルエンターテインメントの勝訴が確定しました。この訴訟で出た結論は、「ユニバーサルエンターテインメントグループで繰り返されてきた不正の責任は岡田和生にある」と氏を処断するもの。情勢からいって、これまで岡田和生氏がどさくさにまぎれて自分のふところに入れてきた会社の資金(=日本円にして20億円ほど)は、今後どこかのタイミングで会社側に回収されると見て間違いないでしょう。ただ、以上で万事解決かといえば、そうとも言い切れません。なぜなら、ユニバーサルエンターテインメントが無事に資金を回収できたとしても、大きな謎が残るためです。
この記事のあらすじ
- ユニバーサルエンターテインメントグループで発覚した不正に関して、いまだわかっていないカネの流れにスポットをあてる
そもそもの発端は「私的な融資」を会社に付け替えたこと
手始めに、問題について改めて整理することからはじめてみましょう。
まず、ユニバーサルエンターテインメントグループで発覚した不正のひとつ、1億3500万香港ドルが社外に流出した件では、①ユニバーサルエンターテインメントの子会社・Tiger Resort Asia(TRA)から、岡田和生氏に近しい中国人・李堅氏に1億3500万香港ドルが渡ったのち、②まもなくオカダホールディングスにこの資金の大半が還流したとわかっています。
これらの送金は、いずれも岡田和生氏の独断によるものです。氏は、自分が代表を務めていたプライベートカンパニー・オカダホールディングスから李堅氏に1億3500万香港ドルを貸し付けていた(下の図A参照)ものの、物入りになったため、この融資をTRAに肩代わりさせたのでした。
「投資」という名目で渡った資金はどこに消えたのか?
前述したように、TRAから李堅氏に渡った1億3500万香港ドルについては、まもなくその大半がオカダホールディングスに還流したとわかっています。しかし、その一方で謎なのは、先立ってオカダホールディングスから渡っていた1億3500万香港ドルのほうです。じつは、この資金は当初、「ジャンケット事業への投資に充てる」という話で岡田和生氏から李堅氏に貸し付けたものだったのですが、実際に李堅氏が「いつ、どんな事業者に、いくら投資をしたか」といった詳細については、2021年現在もなお、何もわかっていません。
「ジャンケット」とは?
ジャンケットは、カジノ事業者と、富裕層をつなぐエージェント(仲介人)のような存在。カジノ施設に富裕層を誘致するなどのマーケティングを手がけたりする。カジノ事業者にとっては、ジャンケットと提携することで収益増が見込める。
代わりにわかっていることといえば、融資を肩代わりさせられる格好になったユニバーサルエンターテインメントグループが李堅氏に資金の完済を求めてきたものの、返済はごく少額にとどまったことと、終いには李堅氏が応答すらしなくなったという事実くらいです。
1億3500万香港ドルの返済をめぐる一部始終

つまり、言うなればオカダホールディングスから渡った資金については、「行方がわからない」ことだけがはっきりしている状態にあるのです。

李堅氏が自らの「住所」としているマンション(写真はGoogleマップから)
当の李堅氏は、このあと2018年になってからある訴訟のなかで、「当該資金はジャンケット事業を含むカジノ関連事業に投資されています」と強弁していますが、ここでもやはり主張の裏付けになるようなものは何ひとつありません。投資に関する書面のひとつすら、です。彼の主張がいかに空虚なものであるかは、一目瞭然でしょう。
訴訟の現場では、李堅氏のこんな空虚な主張を、彼と親しい荒井裕樹弁護士が手放しで追認していたりもします。資金の行方が明るみになると、彼らにとって何かまずいことでもあるのかもしれません。
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果たして、オカダホールディングスから李堅氏に渡った1億3500万香港ドルはどこに消えたのか? どうにもこの闇は深いように思います。
ちなみに香港で係属中の訴訟では、1億3500万香港ドルの送金に関与した関係各位の銀行口座に対して、記録の開示命令が出ています。今後は、こちらの訴訟が見どころになりそうです。
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