ユニバーサルエンターテインメントがパチスロ・パチンコの製造メーカーであることは知っていても、その長い歴史まではご存じない方が少なくないかもしれません。同社の創業者である岡田和生氏が最初に事業をおこしたのは、1967年のこと。これは、氏が会社側から不正を指摘されて、すべての役職を解かれることになった2017年から数えて、ちょうど50年前になります。
およそ50年を誇る歩み
1967年。高度経済成長期の真っ只中にある当時、25歳の岡田和生氏がジュークボックス関連の事業をおこしたことから、すべてははじまりました。事業を通じて得た資金で、氏はこの2年後に最初の会社、ユニバーサルリース株式会社を設立。やがてスロットマシンの開発販売などを手がけるようになり、これらがのちのパチスロなどにつながっていくことになるのです。岡田和生氏は、自身が世界で初めてコンピュータ作動式のスロットマシンを開発したとして、著書のなかなどでたびたび自負しています。
著書のプロフィール欄から
岡田和生 おかだ かずお
1942年大阪市生まれ。専門学校卒業。世界ではじめてコンピュータ前段判定式スロットマシンを開発。
雑誌のプロフィール欄から
1942年東京都生まれ。専門学校卒業。69年、アルゼの前身となるゲームマシンの製造・販売・リース会社を設立。80年からはパチスロ分野に進出し、世界ではじめてコンピュータ作動式スロットマシンを開発、次々にヒット作を生み出し、パチスロ機製造販売の最大手となる。
※出身地については原文ママ。どちらの表記が正しいものか、わかりかねます。
ユニバーサルエンターテインメントはパチンコ、パチスロのメーカーとして知られる会社であるものの、その長きにわたる社史のなかでは、事業の多角化を進めるような動きもありました。過去に進出した分野は、映画配給会社の松竹と提携して、共同出資会社「松竹アルゼコミュニケーション」まで設立した映画事業をはじめ、家庭用ゲームの開発販売やゲームセンターの運営などさまざま。また、2002年には子会社のARUZE USA Inc.を通じて、米国で統合型リゾートを手がけるウィン・リゾーツ社に出資したこともあります。
(参考:松竹アルゼコミュニケーションが手がけた作品はこちら)
ただし、これらの大半は今日までに会社グループから切り離されており、2018年12月時点における同社の事業セグメントは、以下の3つにしぼられています。
- パチスロ・パチンコ事業(遊技機の開発製造販売)
- カジノリゾート事業(「Okada Manila<オカダマニラ>」の運営)
- その他(パチスロシミュレーターアプリの開発販売など)
創業者が会社を支配してきた歴史
次に挙げる一覧は、会社が有価証券報告書のなかで公表してきた沿革と、岡田和生氏の主な略歴を組み合わせたもの、そしてユニバーサルエンターテインメントの株主の状況をもとに作成した年表です。
創業者の岡田和生氏がユニバーサルリース株式会社を設立してからずっと、(グループトップの)社長なり会長なりの立場で経営に強く関与してきたと同時に、株主の立場からも会社を支配し続けてきた様子がうかがい知れると思います。この意味で、「ユニバーサルエンターテインメントの歴史は、岡田和生の歴史である」と例えても過言ではないかもしれません。
ただ、ここで強調したいのは、「もはやこの状況にないこと」のほうです。
現在、創業者は会社から追われる立場
岡田和生氏と、ユニバーサルエンターテインメント。双方が明確に袂を分かつ起点になったのが、2017年5月23日に開催された臨時取締役会でした。このなかで岡田和生氏による不正行為が取り沙汰されると、氏は即日すべての職務を停止されて、その後まもなくすべての役職も解かれたのです。
参考資料
取締役会の動画から
常勤監査役:疑義があって、報告しないということはできません。会社の財産に毀損を与える可能性があるものは、報告しなければいけないので、報告しました。引用元:Japan casino boss Okada loses it in the boardroom, claims he is God!
以降、岡田和生氏は会社側から複数の不正疑惑を追求される身になったと同時に、
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【導入2】岡田和生氏に疑惑 会社に断りなく多額の送金を指示か
岡田和生氏による不正行為については、ユニバーサルエンターテインメント(UE社)と利害関係のない弁護士3名からなる特別調査委員会が、調査結果を出しています。調査結果が公になったのは2017年8月30日の ...
株主としての権利行使もままならない状況にあります。
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【導入3】オカダホールディングスを巡る議決権争い
ユニバーサルエンターテインメント(UE社)の経営云々を語る上で重要なポイントが、その株主構成にあります。同社の発行する全株式のうち68%ほどを保有し、圧倒的な議決権を確保しているのは香港法人オカダホー ...
これまでの長い歴史があるため、いまだに岡田和生氏とユニバーサルエンターテインメントをワンセットでとらえて見る人が少なくないことは理解します。しかし、現状は異なるというのが実情です。
会社の将来は経営陣の取り組み次第
タイムマシンのようなものが出てこない限り、過去の出来事を書き換えることは誰にもできません。それがゆえに、会社の歴史に刻まれた創業者や創業家の名前が変わることも絶対にありません。ただし、だからといって創業者や創業家の不祥事と、会社の存続や将来を結びつけて論じるのはミスリードです。仮に創業者や創業家に犯罪行為があったとしても、あるいはそうした行為が逮捕や起訴につながったとしても、会社に自浄能力があるのなら、その先で試されるのは残って跡を継いだ経営陣の取り組みなのです。それは歴史が証明しています。
あなたはご存知ないですか? 医療用漢方薬市場において圧倒的シェアを誇る有名な会社でも、かつて似たようなことがあったことを。
過去の事例から
『津村昭が3代目社長に就任したのは76年。この年に医療用漢方製剤は保険収載となり、「バスクリン」と共に「漢方のツムラ」として急成長を遂げた。だが、趣味人としても有名な津村は、次第に趣味に明け暮れるようになり、自宅を改造して地下に音楽室を作り、ギター三昧に耽っていく。揚げ句の果てにバンド仲間を役員に登用するなど、公私混同の経営が続いた。また、会社の資金を湯水の如く新規事業に投入していった。後に元関連会社を舞台にした70億円に上る乱脈経理で東京地検特捜部により特別背任で逮捕される事件を起こす。』
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