【導入3】オカダホールディングスを巡る議決権争い

ユニバーサルエンターテインメント(UE社)の経営云々を語る上で重要なポイントが、その株主構成にあります。同社の発行する全株式のうち68%近くを保有し、圧倒的な議決権を確保しているのは香港法人オカダホールディングス(OHL)=岡田ファミリーの資産管理会社です。これはすなわち、ユニバーサルエンターテインメントの経営方針から取締役の顔ぶれまで、すべてはオカダホールディングスに決定権があることを意味します。オカダホールディングスの議決権をめぐる家族間の動きが、何かとマスコミから取り上げられてきたのもこのためです。

単独過半数を握る主体は存在しない

オカダホールディングスの株式保有割合は、岡田和生氏が約46%、長男の知裕氏は約43%、長女の裕実氏は10%弱、残りの1%以下は妻の幸子氏という構成です。単独で過半数を所有する人がいないところが大きなポイントで、オカダホールディングスの実権をにぎるには、少なくとも株主のうち2人の意見が一致する必要があります。

現状は、長男の知裕氏が、長女の裕実氏と信託契約を結ぶことで、合計約54%の議決権を確保しています。和生氏がユニバーサルエンターテインメントにおけるすべての役職を解かれ、いまなお復帰できないでいるのは、このため。本来、ユニバーサルエンターテインメント株式の過半数を保有するオカダホールディングスには、ユニバーサルエンターテインメントの経営体制を一新できるほどの権限があります。しかし、オカダホールディングスの董事(=取締役に相当)には和生氏に変わって、知裕氏が選任した公認会計士と弁護士の2名が就いたため、和生氏は影響力を行使できなくなっているのです。

こうした状況に対して、和生氏は実権を取り戻すべく、これまでさまざまな行動に出ています。

最初のアクションは、2017年5月23日。自身がオカダホールディングスの董事を解任されたことを知った直後に、ユニバーサルエンターテインメントの臨時取締役会において、ユニバーサルエンターテインメント株式10%ぶんのストックオプションを自分自身に付与するよう主張しました。ストックオプションを通じて自身の持ち株を増やすことで、知裕氏の動きに対抗しようとしたというわけです。この議案は​結果として多数決によって却下に至りましたが、岡田和生氏が怒号を響かせたとの報道もあります。

2017年5月23日の取締役会から
『「反対」に5人の手が挙がったのを見て、岡田氏は叫んだ。「次の株主総会で全員やめさせる。信頼関係が守れないなら、全員罷免だ」』
(引用元:「全員、罷免だ」パチスロ創業者会長が取締役会で叫んだ)

取締役会の動画から
岡田和生氏:何が検証ですか。10%増やしたらこういう結果になると、はっきりしていますよ。

<<一同しばらく沈黙>>

社外取締役:議長、内容は不明ではあるけれども、10%の発行をするという、そういう提案を株主総会に対してすると。この取締役会で決めるかどうか……。

岡田和生氏:議案として出すために、役員会をやっているんですよ​。議案として出すということで、緊急動議じゃないですよ。議案として正式に出す。だから、いまのうちに入れ込みましょう、と言っている。

(引用元:Part 2: Japan casino boss Okada loses it in the boardroom!!!)

なお、この日の臨時取締役会は、岡田和生氏による不正行為が取り沙汰された場でもありました。

取締役会の動画から
社外取締役:いま急に示された話なので、私も詳細、全貌を理解したわけじゃないし、市倉監査役自体もさっきから申し上げているように、疑惑があるとおっしゃっているんですね。別に、こういうことがなされたという事実を断定しているわけではない。さらに調査をしたいということをおっしゃるわけでしょう?

常勤監査役:はい。

社外取締役:もし、内容が事実であるとすれば、刑事事件にもなりかねない。ちょっと大げさな受け取り方かもしれないですけれども。これはぜひ、​市倉監査役、監査役会の希望通り、調査するものは続けるべきだと思います。会社の責任として。

岡田和生氏:ちょっと待ってください。いまの発言も……刑事事件になる可能性だという風に受け止められたと? その影響力を与えたと? こんなの、バカみたいな話はないですよ。私が個人の金をもらう? 会社の金をもらう? 黙って。

社外取締役:そういうことがあるかどうか、調査するということですよ。

岡田和生氏:調査なんかすることないでしょう! ないんだから。

社外取締役:あなたは神様じゃないんだからね。

岡田和生氏:神様だよ! その意味では。間違ったことをしないという意味では神様だよ。

​社外取締役:調査するということを、彼は言っているわけで。

岡田和生氏:そういう誤解を与えておいて、バーンと投げておいて、それで刑事事件だのどうこうの偉そうなことを言うな! ふざけんな!

(引用元:Japan casino boss Okada loses it in the boardroom, claims he is God!)

信託契約の存在

目立った変化があったのは、ユニバーサルエンターテインメントの株主総会で、新たな経営体制が可決に至り、事実上、岡田和生氏が追放された形になってからしばらく経った2017年9月のこと。岡田和生氏が記者会見を開き、自身の説得に対して長女の裕実氏が賛同した旨を公表します。

2017年9月14日の記者会見から
『「長女はよくわからずに兄に従った。その後長女と話をしたところ、『だまされていた』と目を覚ました」と説明。「長女と自分の株を合わせて過半数を取り戻した」として、すでに同族企業の代表取締役に復帰したと主張した』
(引用元:「会社を取り戻す!」追放されたパチスロ前会長が“気炎”)

しかし、結局はこの件も大勢を覆すまでには至りません。岡田和生氏にとって大きな壁として立ちはだかったのは、これよりずっと以前に知裕氏と裕実氏が交わしていた、冒頭の信託契約でした。当該契約は、公正証書の体裁で交わしたもの。要約すると

  • (1)OHLの企業価値毀損の防止と、OHLの利益の最大化が目的
  • (2)信託の目的に従い、OHLに対して有する権利を行使する
  • (3)受託者はOHLの配当その他の収益を受益者に支払う
  • (4)30年の契約期間中、信託契約は解除できない
  • (5)契約は日本法に準拠。これに従い解釈される

といった内容になっており、強い効力を有しているのです。受託者の同意なしには受託者を解任することもできません。

2018年10月現在、日本国内外において主に和生氏側が提訴する形で、関連する裁判が起きているような状況であるものの、信託契約の事情があるために、オカダホールディングスの実権を巡る問題についてはいまなお膠着状態にあります。

(このあたりの詳細について知りたい方は上記の記事をご覧ください)

【どっちが勝ってもたぶん「OkadaManila」の名前は変わりませんっ】

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