渦中のユニバーサルエンターテインメント

「オカダマニラ上場」を約束したパートナーシップに亀裂 その根幹にあるモノ

ユニバーサルエンターテインメントグループとAlexander EisemanおよびZAMA Capitalと26 CapitalおよびJason Aderの相関図

相関図を見るとわかるように、SPACをめぐる一連の取引にたずさわるのは、ユニバーサルエンターテインメントグループと26 Capitalという当事者だけではありませんでした。問題は、ここではじめて登場した第三者――Zama Capitalとその代表者・Alexander Eiseman(=アレクサンダー・アイズマン)氏などに、利益相反の疑いがあることです。

利益相反とは?


顧客の利益と、自分の利益が相反するような状況にあることを意味する言葉。経営者や弁護士などが、本来職務上追求すべき利益や目的をないがしろにして、自分自身や第三者の利益を図った場合に、「それは利益相反にあたる」などと指摘する。たとえば、顧客から資金をあずかって運用するファンドマネージャーが、ファンドの資金でA社の株式に投資する方針を決める一方で、ファンドマネージャー個人の資金やファンド運用会社の自己資金を使ってA社の株式を先回りして売買したら、これも利益相反。法令上、問題になりうる。

「Zama Capital」とは?


SPACを用いた上場スキームに関わる助言や支援を請うため、ユニバーサルエンターテインメントグループが頼ってきた相手。もともとユニバーサルエンターテインメントグループに対してSPACを用いた上場スキームを持ちかけ、そののち26 Capitalを引き合わせたのも、Zama Capitalを率いるアレクサンダー・アイズマン氏だった

ユニバーサルエンターテインメントグループは最初、相手方になるSPAC候補の紹介を受けたり、相手候補との取引に関する助言を受けたりする目的で、Zama Capital Advisors LPと契約。後日、26 Capitalと合意に至ると、続いて26 Capitalとの合併手続きに関するコンサルティング契約をZama Capital Strategy Advisors LLCと結んだ。

利益相反の疑いがあることは、ユニバーサルエンターテインメントグループがアレクサンダー・アイズマン氏などを相手取ってニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所ではじめた訴訟を通じて明らかになりました。

SPACに関連した訴訟の全体像

SPACに関連した訴訟の全体像

ちなみに、デラウェア州で反訴したユニバーサルエンターテインメントグループが求めていることは、「26 Capitalと交わしていた合併契約の打ち切り」です。詳しくは海外メディアの記事をご覧ください。

Okada Manila parents looking to terminate merger agreement for US listing, accuse SPAC partner of fraud and breaching US securities laws – IAG
Okada Manila parents looking to terminate merger agreement for US listing, accuse SPAC partner of fraud and breaching US securities laws

The operating entities of Philippines integrated resort Okada Manila have filed a series of counterc ...

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訴状によれば、その概略は次の通りです。

利益相反の概略

Zama Capitalが26 Capitalのスポンサー株式を所有していると指摘した訴状の文面

ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提出された訴状の文面

  • Zama Capitalは、「オカダマニラの上場」に関連してユニバーサルエンターテインメントグループを支援するかたわら、26 Capitalを率いるJason Ader氏などに450万米ドルを支払い、同社のスポンサー株式およそ58%(=400万株)と、同社のワラント(=新株引受権)およそ60%(=450万個)を譲り受けていた
  • Zama Capitalと26 Capitalがスポンサー株式に関連した取引を済ませたのは2021年7月
  • しかしZama Capitalはこうした事実を伝えないまま2021年10月にユニバーサルエンターテインメントグループとコンサルティング契約を交わし、26 Capitalともどもこの取引についてずっと口をつぐんできた
  • こうした取引の存在が明るみになったのは、デラウェア州で26 Capitalの提訴にユニバーサルエンターテインメントグループが反訴をしたことから

ユニバーサルエンターテインメントグループと26 CapitalおよびZama Capitalの利害関係


スポンサー株式の値打ちは?


ユニバーサルエンターテインメントグループから米国証券取引委員会に提出済みのForm F-4では、「合併が完了した場合、26 Capitalのスポンサー株式は総額6780万米ドルの価値になる」と見積もっている。ただ、SPACのスポンサー株式は、相手企業との合併が完了しないと、市場で流通するクラスA株に転換できず、無価値になってしまう特殊なもの。必ずしも値がつくわけではない。言い換えれば、58%のスポンサー株式を持つZama Capitalは、3900万米ドル超の報酬を手にできるかどうか、そういう境界線上にいるということ。

また、この訴訟では、次のような内幕や経緯も公になっています。

連邦地方裁判所の訴訟で公になったこと

関係者の構図

  • ユニバーサルエンターテインメントグループが26 Capitalと結んだ合併契約の手続きにちゅうちょしだしたのは、フィリピンの最高裁判所が2022年4月27日にSQAOを出したことから
  • 念頭にあったのは、「このまま手続きを進めて26 Capitalとの合併を完了すると、(自分たちが)フィリピンのSQAOや米国の証券法に違反することになる」といった懸念
  • 一方で26 CapitalのJason Ader(=ジェイソン・エイダー)氏やZama Capitalのアレクサンダー・アイズマン氏たちは、こうした懸念をよそにSQAOが出たあとも「合併の手続きを進めなければ契約違反」とユニバーサルエンターテインメントグループに圧力をかけてきた
  • ユニバーサルエンターテインメントグループによれば、オカダマニラで占拠事件が起きたあとには、26 CapitalとZama Capitalから、事件について何も公表しないまま合併の手続きを進めるよう要請されたこともあったという

当事者の対応

  • 岡田和生グループからオカダマニラを奪還した2022年9月2日以降も、ユニバーサルエンターテインメントグループが合併に慎重なスタンスを続けたのは事実
  • ただしこれは、以下のことが関係している
    1. SQAOは依然として有効
    2. (オカダマニラで起きた事態を重く見た)米国の監査法人・UHY LLPが、「改めて過去の財務諸表に関する手続きを済ませてから、会社として監査業務を継続するか再検討する」旨を表明したため、米国証券取引委員会に提出するForm F-4の作成が困難になった
    3. 法務面からユニバーサルエンターテインメントグループをサポートする米国の法律事務所・Millbank LLPとBaker&Mackenzieも、26 Capitalとの合併手続きを進めることに否定的な見解を示した

機密情報をめぐる事件

  • また、2022年9月30日には、ユニバーサルエンターテインメントと26 Capitalが合併契約の期限を1年間延長することで合意したと公表しているが、両者の関係が修復していたわけではない
  • このあとには、「26 Capitalが外部のコンサルタントを使って、ユニバーサルエンターテインメントグループのあずかり知らぬところでオカダマニラに関連した財務諸表の作成に取りかかる」という事件が起きている
  • 事件はUHY LLPからユニバーサルエンターテインメントグループに有事を連絡したことで発覚したもの
  • まもなく調査に乗り出したユニバーサルエンターテインメントグループは、関係者間でやりとりしたメールなどから、「Zama Capitalがユニバーサルエンターテインメントグループの機密情報を26 Capital側に横流しする手配をしていたこと」を突き止めた
  • 状況からいって、26 Capital側は不適切な手段で取得した情報を使って財務諸表の作成に着手していたと考えられる

背景にあるのは「やましさ」?

全体を見たとき興味深いのは、26 CapitalとZama Capitalが秘密裏に取引をしていたこと、そしてその両者が問題の取引を隠したまま、荒っぽい手口でユニバーサルエンターテインメントグループに合併契約の履行を迫り、仕舞いにはデラウェア州で訴訟まで起こしているという一連の流れです。26 Capitalは、いまでこそ同社に対するZama Capitalの持ち分を公にしていますが、ユニバーサルエンターテインメントの対応次第では取引の存在を隠したままにしていたことも十分考えられるでしょう。

Zama Capitalの持ち分を開示した26 CapitalのForm 10-K

26 Capitalは、2023年4月17日に公表したForm 10-K(=日本でいう有価証券報告書)でようやくZama Capitalの持ち分を公表した

26 CapitalとZama Capitalは、何かしらやましさみたいなものがあったからこそ、両者間の取引を秘密にしてきた。こんな可能性が捨てきれないように見えます。


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