元関係者とのつながり

ユニバーサルエンターテインメントに100億円超の報酬を請求した弁護士が事実上の白旗

当然、訴訟のなかでは荒井弁護士から反論がありました。これらの契約は違法なものではない、と。

しかし、彼の反論が契約の違法性を阻却するのに足るものだったかといえば、そこは疑問です。ためしにここで4つの契約それぞれに対する荒井弁護士の反論と、それらにまつわる事実関係をご覧に入れましょう。

ウェルインベストメンツリミテッド名義の契約
【1】米国におけるウィン・リゾーツ社との訴訟に関する委任契約
<契約の概要>
  • この契約は、2012年ごろからユニバーサルエンターテインメントグループおよび岡田和生氏が、米国ウィン・リゾーツ社と法廷闘争を繰り広げていたことに端を発するもの

【参考】

ユニバE岡田氏がウィンを反訴-株式買い戻し無効と賠償を請求 - Bloomberg
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日本のパチスロ機メーカー、ユニバ ーサルエンターテインメントが保有する米カジノ運営会社ウィン・リゾ ーツの株式20%をウィンが割引価格で強制的に買い戻したのは違法など として、ユニバーサルの岡田和生会 ...

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  • ユニバーサルエンターテインメントグループの代理人を務める米国の法律事務所と、岡田和生氏の間で繰り返し生じていた不和を、法律家である荒井弁護士が取り持つと決まったことから契約に至った
  • 契約を通じてユニバーサルエンターテインメントから荒井弁護士側に委ねた業務を一言で言い表せば、「訴訟を戦い抜くためのアドバイザー」
  • 荒井弁護士が岡田和生氏と米国の法律事務所の間に入って両者の意思疎通を図り、訴訟の手続きを確かなものにすることを想定していた

米国ウィン・リゾーツ社との訴訟に関する委任契約の構図

  • ユニバーサルエンターテインメントの主張によれば、自社として荒井弁護士側に求めていたのは、
    • 法律家としての専門知識と経験にもとづき、膨大かつ複雑になっていた法的紛争について確認・整理して説明する役割
    • 法律家の立場から戦略を助言する役割
    • さらにこうした情報をもとにユニバーサルエンターテインメントが下す意思決定を、米国の弁護士に伝えて実行していく役割

    だったという

<荒井弁護士の主な反論>
  • 荒井弁護士は、契約を通じて自分がやってきたのは単なる連絡、調整、報告といった業務であって、これは(非弁護士が扱うことを禁じられている法律事務ではなく)弁護士以外の者が米国の弁護士の指揮下で弁護士業務を補佐する業務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だと主張
  • ウェルインベストメンツリミテッドが契約の当事者であっても問題はないと強調するとともに、荒井弁護士から弁護士ならではの専門知識と経験にもとづくアドバイスやサポートを受けてきたとする、ユニバーサルエンターテインメント陣営の主張を否定した
  • 反論の一例として尋問でのやりとりを挙げると、次のような調子

ユニバーサルエンターテインメントの代理人:あなたはウィン・リゾーツ社との訴訟に関連して、岡田氏のために全体戦略案というものを何度も作成しているようですけど?

荒井弁護士:きちんと中身を具体的に見ていただければわかると思うんですが、(訴訟の戦略ではなく)非常に抽象論の高い、経営戦略としての戦略案ですね。経営戦略としてこの訴訟をどうしていくか、そういう意味でのメモを作ったつもりです。

<実態を振り返ってみたときの事実関係>

契約の経緯

  • たしかにユニバーサルエンターテインメントとしては、あくまで弁護士としての知見や能力に期待して、この契約に及んだように映る
  • というのも、この契約を締結するまでには次のような経緯があったため
    1. 米国の訴訟に関連した業務を荒井弁護士が引き受けると決まると、ユニバーサルエンターテインメントは当初、ウェルインベストメンツリミテッドではなく、荒井弁護士個人を相手方にして契約を結んだ
    2. このときの契約書では、彼が代表を務める法律事務所(=現・ウェルスマネジメント法律事務所に業務を委任する取り決めになっている
    3. 1の契約後しばらくして、荒井弁護士から岡田和生氏やユニバーサルエンターテインメントの担当者に対し、契約の当事者をウェルインベストメンツリミテッドに変更したいと伝えるようになったとき、彼は「契約内容につきましてはご変更いただかなくても結構」「同一内容の契約を新たに締結する」などといった文言を用いた(≒ユニバーサルエンターテインメントからすれば、変わるのは契約当事者だけであって、これまで通り荒井弁護士や彼の法律事務所から法的な助言などを受けられることに変わりはないと理解できる)

荒井裕樹弁護士がウェルインベストメンツリミテッド名義で結んだ契約の構図

契約書の文言

  • 荒井弁護士は、この契約が弁護士としての業務を約束したものではないことを強調したものの、契約書にはユニバーサルエンターテインメントからウェルインベストメンツリミテッドに支払う料金について、

    本件の弁護士報酬・・・・・・・・は、下記のとおりとする」

    との文言が明記されていたほか、契約解除について説明するくだりには、

    「WILは、本件処理につき弁護士としての責務・・・・・・・・・を全うできないと判断した場合には、本件の代理人の地位を辞任することができる」

    ※WILは、ウェルインベストメンツリミテッド(=Well Investments Limited)の略称

    との文言もあった

  • したがって書面を見る限りこの契約は、ユニバーサルエンターテインメントから弁護士に報酬を支払うと約束したものであり、荒井弁護士側が契約書を通じて提供する役務は弁護士としてのものだったと考えられる
  • 荒井弁護士はこれらの文面について、「便宜上、弁護士報酬という言葉を使った」「訴訟代理業務を引き受けるにあたって用意した別の契約書を流用して作ったので、一部の文言がそのまま残った」などといった反論で応じたものの、意味のある反論だったのかどうか

着手金

  • ユニバーサルエンターテインメントと荒井弁護士個人の間で同様の契約を結んでいたときに月額300万円だった着手金(=依頼者から支払う料金のこと)は、ウェルインベストメンツリミテッド名義の契約になると月額600万円になった
  • これは当時、荒井弁護士からユニバーサルエンターテインメントに対して、着手金に関連した申し出があったため
  • ここで上乗せになった300万円は、当時別途ユニバーサルエンターテインメントと荒井弁護士個人の間で結んでいた、日本国内の訴訟代理人契約3件の着手金から合計300万円を減額することで捻出したもの
  • つまり荒井弁護士は、契約主体をウェルインベストメンツリミテッドに切り替えるタイミングで、これまでユニバーサルエンターテインメントの訴訟代理人として受け取っていた着手金を300万円減らし、同額をウェルインベストメンツリミテッドとして受け取れるよう手を加えたと考えられる

ウェルインベストメンツリミテッドに支払われた着手金の出所

  • また、荒井弁護士はこののち、ユニバーサルエンターテインメントからさらに別の訴訟代理業務を引き受ける対価として、新たに月額90万円の着手金を受領することになったときにも似たようなことをやっている
  • 彼は、新たに受け取ることになった着手金90万円を個人の報酬とせずに、ウェルインベストメンツリミテッドを通じて受け取っていた月額600万円の着手金に上乗せするよう、ユニバーサルエンターテインメントに依頼
  • その結果、ここで取り上げたウェルインベストメンツリミテッド名義の契約を通じて受け取る着手金は、一時690万円になった

ウェルインベストメンツが受け取った報酬の推移

  • これら訴訟代理業務に関連した着手金の移し替えは、本来弁護士個人として受け取るべき報酬をタックスヘイブンの法人で受け取るような行為であり、適法と言えるか疑わしい

実務

  • 荒井弁護士が米国の訴訟に関連して、弁護士だからこそこなせる業務に携わったり、弁護士としての特権を行使していたことは確認できている
  • 次に挙げるデポジションの手続きはその一例
    • 米国の訴訟に関連して、かつてユニバーサルエンターテインメントに務めていた元従業員のデポジション(=自陣、相手方双方の弁護士が立ち会って、訴訟の関係者から話を聞く「証言録取」)を実施すると決まったあと、荒井弁護士がユニバーサルエンターテインメントグループを代理して手はずを整えた
    • 下の文面は、当時荒井弁護士がユニバーサルエンターテインメントの担当者に送ったメールから抜粋したもの

荒井弁護士が送ったメールから

東京地裁より、都内に住所を有する●●・■■・▲▲のデポジション手続について電話で回答があり、各自の事件番号を教えてもらいました。

(中略)

添付の委任状にご捺印をいただき、弊事務所までご返送いただければ、東京地裁に提出し、手続についての照会を行います。

※●●、■■、▲▲に入っていたのはユニバーサルエンターテインメントの元従業員それぞれの名前

届け出

  • 弁護士法30条では、弁護士が(弁護士業以外の)営利を目的とした業務にたずさわる場合、その旨を弁護士会に届け出るよう定めている

弁護士法から

(営利業務の届出等)
第三十条 弁護士は、次の各号に掲げる場合には、あらかじめ、当該各号に定める事項を所属弁護士会に届け出なければならない。
一 自ら営利を目的とする業務を営もうとするとき 商号及び当該業務の内容
二 営利を目的とする業務を営む者の取締役、執行役その他業務を執行する役員(以下この条において「取締役等」という。)又は使用人になろうとするとき その業務を営む者の商号若しくは名称又は氏名、本店若しくは主たる事務所の所在地又は住所及び業務の内容並びに取締役等になろうとするときはその役職名

引用元:弁護士法|e-Gov法令検索

  • しかし荒井弁護士は、この契約の件をずっと弁護士会に届け出ていなかった
  • 荒井弁護士の主張するように、この契約が本当に弁護士として結んだものではないのなら、本来彼は(自分自身の名義で契約を結んだ時点で)ユニバーサルエンターテインメントから月額数百万円を受け取ることについて、弁護士会に届け出なければならなかったはず
  • したがって荒井弁護士の陣営から出た「弁護士としての業務ではなかった」という反論は、契約の違法性を否定するためにひねり出した詭弁と見られても仕方がない

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