元関係者とのつながり

ユニバーサルエンターテインメントに100億円超の報酬を請求した弁護士が事実上の白旗

まるで、腕っぷしにモノを言わせてカツアゲするつもりだったチンピラが返り討ちにあったような幕切れです。ある案件に関連して、荒井裕樹弁護士とユニバーサルエンターテインメントの間で続いてきた法廷闘争は、未払いになっている報酬を請求するとして訴訟をはじめたはずの荒井弁護士が、ユニバーサルエンターテインメントに解決金を支払う・・・・・・・と約束することで決着しました。

提訴で攻勢に打って出た本人が解決金を支払った不思議

かつては「法律事務を担当する弁護士とその委託元」という関係にあった、荒井裕樹弁護士とユニバーサルエンターテインメント。両者の対立は、もともと荒井弁護士が報酬の支払いに関して異議を唱えたことからはじまったものですから、冒頭のくだりには違和感をおぼえたかもしれません。「解決金を支払うことになったのはユニバーサルエンターテインメントのほうではないのか?」と。しかし、それはさにあらずです。荒井弁護士からユニバーサルエンターテインメントに解決金を支払うという約束で両者の争いが決着したこと、この点に間違いはありません。

2018年から5年近くにわたって続いてきた訴訟は最終的に、裁判所の用意した和解条項に従って双方が矛をおさめる、という形で決着しました。荒井弁護士からユニバーサルエンターテインメントに解決金を支払うと決まったのも、もとは裁判所の提案によるものです。

和解条項の要旨

  • 荒井裕樹はユニバーサルエンターテインメントに対して、解決金として3億円の支払義務があることを認める
  • ユニバーサルエンターテインメントは、平成30年10月22日から令和2年11月9日までに公表した文書をはじめとする、本件訴訟に関連した文書を自社のウェブサイトから削除する
  • 本件訴訟の当事者は、本件訴訟および和解などに関連する事項について対外的公表を今後一切しない
  • 本件訴訟の当事者は、その余の請求を放棄する
  • 本件訴訟の当事者の間には、本和解条項で定めたものを除いて、ほかには何ら債権債務がないことを相互に確認する

※和解で決着した訴訟は、リンク先の訴訟(か)および(き)に該当

【地域別】ユニバーサルエンターテインメント関連訴訟相関図【日本】

ユニバーサルエンターテインメントおよび岡田和生氏に関連して、日本国内で起きた訴訟をまとめました。なお、ここに掲載中の訴訟は、ユニバーサルエンターテインメントにおいて経営騒動が表面化してから提起されたも ...

いったい、どうしてこんな取り決めになったのか? 提訴に打って出たはずの荒井弁護士は、なぜこれほど自分に不利な和解条項を受け入れたのか? ぱっと見、不可解な結末になった理由は、この法廷闘争の過程をたどっていくと、あらわになります。

虚をついた反訴

ここまで再三ふれてきたように、法廷闘争はもともと「約束した報酬が支払われていない」として、荒井弁護士からユニバーサルエンターテインメントに仕掛けたものでした。この訴訟を通じて荒井弁護士のほうから請求したその額、じつに100億円超。

ところが訴訟はまもなくして、荒井弁護士の狙いとは異なった展開に転んでいきます。

流れを変えたのは、ユニバーサルエンターテインメントから荒井弁護士側に反訴をしたことでした。同社は、反訴のなかでこんな主張を展開します。

  • (報酬を約束していた)契約は違法なものだから無効になる
  • 契約にもとづいて支払った金員すべての返還を求める
  • また、当社は誤って荒井弁護士側に支払った着手金(≒弁護士に支払う料金の一種)があるので、過払いぶんの返還を求める

とりわけここから荒井弁護士にとって足かせになっていくのが、「契約は違法なものだから無効になる」という主張です。もし契約が無効なものと見なされれば、契約で約束していた報酬――訴訟を通じて請求した100億円超も含めてすべて――は無効になるし、ひょっとしたら法律違反を理由に、弁護士としての地位すら危うくなるかもしれない。反訴を機に荒井弁護士が直面することになったのは、そんな不確かな状況でした。

Well Investments Limitedという「ハコ」

ユニバーサルエンターテインメントが主張のなかで「違法な契約」と指摘したものは合計4つありますが、「違法」の根拠については大筋で共通しています。

根拠の核心は、いずれの契約でも契約の相手方が荒井弁護士本人でもなければ彼の設立した法律事務所でもなく、Well Investments Limited(=ウェルインベストメンツリミテッド)なる法人になっていたこと。それと、この法人が弁護士法人ではなかったことです。この法人は、荒井弁護士が代表者になっている、ただそれだけのハコのようなものでした。

なぜ、こうした契約形態が法律違反にあたると言えるかといえば、これは日本の弁護士法において、弁護士または弁護士法人でない者は原則、報酬を得ることを目的として他人の法律事件に介入してはならないと定めているためです(≒非弁護士による法律事務の取り扱い禁止)。

弁護士法から

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

引用元:弁護士法|e-Gov法令検索

契約にもとづいて荒井弁護士に任せていたのは、弁護士でないと扱えない法律事務なのだから、本来ならウェルインベストメンツリミテッドが契約当事者になって報酬を受け取るのは適切と言えないはず。しかしそれにもかかわらず、当時荒井弁護士はこれらの契約が何ら問題ないものとして、当社との契約手続きを進めていた。ユニバーサルエンターテインメントの主張を要約すれば、つまりこういうことです。

 

「ウェルインベストメンツリミテッド」とは?


ここで出てきたウェルインベストメンツリミテッドは、荒井弁護士が英国領ヴァージン諸島で設立し、彼が代表に就いた会社にすぎないものだった。ヴァージン諸島といえば、課税逃れに活用されてきたタックスヘイブン(=租税回避地)だから、荒井弁護士がこの会社を設立した狙いも、税負担の軽減にあった可能性は否定できない。興味深いことに、彼はここで取り上げた契約をユニバーサルエンターテインメントと結ぶ少し前に、この会社を設立していた。

また、訴訟の尋問では、ユニバーサルエンターテインメントの代理人弁護士から荒井弁護士に

(当社からウェルインベストメンツリミテッドに支払った報酬に関して)納税はしているのですか?

とたずねたところ、彼が

(顧問税理士や公認会計士を指して)そちらにお願いしているので、適切に処理されていると思います・・・・

とあいまいな回答で避けようとしたことも確認できている。彼は、こののち裁判長からはっきり回答するよう促されると、観念したのか、

(納税したかは)知らないです

と答えた。

契約は法律違反にあたるのか?

次のページへ >

事実にもとづく、事実にこだわる

当サイト「ユニバーサルエンターテインメントの経営騒動に潜む闇」が大切にしているのは、

  • 事実にもとづく、事実にこだわる
  • しっかりとした裏付けをとって、真相に迫る

という信念です。
当サイトでは、こうした信念を貫くため、裁判記録をはじめとした国内外のありとあらゆる情報にアクセスし、さまざまな物証に目を通し、徹底して調査することに注力しています。「誰々がこう話した」「関係者はこう言っている」、そんな伝聞を中心にすえた記事とは一線を画す、

ホンモノの記事


をご覧ください。

-元関係者とのつながり
-,

Ads Blocker Image Powered by Code Help Pro

広告ブロックを確認しました!

ブラウザ拡張機能を使用して、広告をブロックしていることが確認できました。

ブラウザの広告ブロッカーを無効にするか、当サイトのドメインをホワイトリストに追加したのち、「更新」をクリックしてください。

あなたが広告をブロックする権利があるように、当サイトも広告をブロックしている人にコンテンツを提供しない権利と自由があります。

Powered By
Best Wordpress Adblock Detecting Plugin | CHP Adblock