訴訟と捜査の現場から

「岡田和生会長の解任」に違法性なし――フィリピン最高裁判所が太鼓判

岡田和生氏の処遇をめぐって続いてきた、フィリピン国内の法廷闘争がついに決着です。当地の最高裁判所は、ユニバーサルエンターテインメントグループの経営に復帰しようともくろむ岡田和生氏の言いぶんを退け、2018年から続いてきた訴訟そのものを棄却しました。氏が思い描く劇的逆転プランは、やはりどうにも実現しそうにありません。

解任は覆らず

フィリピンの最高裁判所が棄却した訴訟は、「私をTiger Resort Leisure and Entertainment社(=現地で営業するオカダマニラの運営会社)の取締役から解任した手続きは無効である」などと主張する岡田和生氏の言いぶんをめぐって争いになっていたものです。

2018年からはじまったこの訴訟では、岡田和生氏が幾度にもわたって新たな申し立てを続けるなど、執拗な攻勢を続けてきましたが、最高裁判所は最終的に氏の訴えすべてを退けました。決議は2023年11月13日付けです。

最高裁判所から出た最終判断の要旨

(1)時効

  • 当裁判所は、本訴訟が取締役選任の正当性について争うものになると判断した
  • 取締役の選任について争う場合、訴状は選任の日から15日以内に提出しなければならない
  • しかし、このケースでは岡田和生が2017年6月16日の臨時株主総会で解任された一方、本訴訟の訴状は2018年8月29日に提出されている
  • したがって、この件は時効にあたる

(2)解任プロセスに問題はない

  • 岡田和生は、自分がTiger Resort Leisure and Entertainment社の株主であり、自分以外に同社の取締役を任命する権利はない旨も主張したが、株主云々の主張は名目上のものにすぎなかった
  • 香港と日本で出た判決は、岡田和生の息子・知裕が妹の裕実と結んだ信託契約の有効性を確認している
  • また、これに伴い、オカダホールディングスを支配する最大株主は岡田知裕になった
  • 以上により、岡田和生の解任は、Tiger Resort Leisure and Entertainment社にとって最終的な親会社にあたるオカダホールディングスから正当な権限が行使された結果だと言える

ここで最高裁判所が言及した信託契約どうこうというのは、下記の記事で取り上げた判決のことです。

最高裁判所
信託契約問題に決着 オカダホールディングスの実権は知裕氏に有り

岡田一族の資産管理会社・オカダホールディングスに関連して、岡田和生氏の息子・知裕氏が、妹の裕実氏と結んだ信託契約。この契約の有効性をめぐって続いてきた法廷闘争が、ついに終局をむかえました。 訴訟は「信 ...

世間では、「香港や日本で出た判決などフィリピンには関係ない」旨を吹聴する声も出ていました(※画像参照)が、デタラメにすぎません。

(3)付随する措置の撤回

  • (2022年4月に発布した)SQAOは、訴訟の判決が無意味なものとなる事態を防ぐための措置
  • SQAOは本訴訟に付随するものであるため、ただちに撤回される

2022年4月27日付けで最高裁判所から出たSQAO(=「Status Quo Ante Order」の略称)は、Tiger Resort Leisure and Entertainment社に対して、一旦「岡田和生が会社の取締役から解任される前の状態」に戻すよう命じたものです。SQAOが有効な間は、不正行為を繰り返してきた岡田和生氏が会社の取締役として居座ることになったため、ユニバーサルエンターテインメントグループからすると、金融機関との交渉を進められないなど、さまざまな支障が生じる事態になっていました。下記の記事では、SQAOが出た当時の様子をまとめています。

オカダマニラ外観
「岡田和生の復帰を認めた裁判所命令」が意味するところ

去る2022年5月11日、インターネット上にインパクトのある話が出回りました。なんと、ユニバーサルエンターテインメントグループから追放された岡田和生氏に手を差し伸べる、そんな命令がフィリピンの最高裁判 ...




「宴のツケ」

こうして、またしても岡田和生氏の復職は幻となりました。しかし、このケースの場合、これにておひらき、とはなりません。次の焦点になるのは、「岡田和生が刑罰を受けるのかどうか」です。何しろ氏は、2022年4月に最高裁判所から出たSQAOを曲解した上で、近しい取り巻きたちに、現地で営業するオカダマニラの経営権をユニバーサルエンターテインメントグループから奪い取らせていたのですから。

2022年5月31日にオカダマニラに乗り込んだ岡田和生グループは、武力でもって施設を制圧しました。まるでヤクザのカチコミです。当時の現場の様子や、ここに至るまでの経緯などについては、下記の記事群で詳しく取り上げています。

岡田和生グループがオカダマニラに乗り込んだ現場
岡田和生グループがオカダマニラを力ずくで奪い取る 実力行使に出た背景には何が?

ずいぶんと強引な手段に打って出たものです。フィリピンでは、2022年5月31日に岡田和生氏の意向をくんだグループが、50人ほどの私設警備員などを連れてオカダマニラを占拠する、といった行動に出ました。ま ...

岡田和生グループは凶行に打って出なければならなかったのかもしれない

岡田和生氏の意向を受けたフィリピン人たちが、オカダマニラを力ずくで奪うといった大胆な行動に出てから、早1ヶ月。これまでのところ、引き続き岡田和生氏たちの目的や狙いについてははっきりとしませんが、動機と ...

【情報メモ】「オカダマニラ強奪」に動いた主要人物たちの足跡

ユニバーサルエンターテイメントグループによって運営されていたオカダマニラを力づくで実効支配するという、大胆な行動に出た人々の足跡を追うことで、何か見えてくるのではないか――。そんな考えから、当該事件の ...

【短信】沈黙を破った岡田知裕氏 オカダマニラを強奪した父親の排斥に動くと言明

岡田和生グループがオカダマニラを強奪し、占拠を続けている状況に対して、岡田和生氏の息子・知裕氏がプレスリリースを通じて声明を公表しました。岡田知裕氏がこうやって表立った動きを見せるのはこれまでなかった ...

下記の記事は、「オカダマニラ事件」の全体像をまとめたものです。記事のなかでは、①岡田和生グループがオカダマニラを乗っ取る前後のことから、②オカダマニラをユニバーサルエンターテインメントグループが奪還したときのこと、それと③そのあとの話まで取り上げています。

オカダマニラ外観
【情報メモ】「オカダマニラ占拠」の経緯と変遷

いつもと同じように営業を続けていたリゾート施設の中枢に、徒党を組んだ集団が突如乗り込み、施設一帯を一気に占拠した――。まるで事情を知らない人が聞けば、漫画やドラマのワンシーンを思い浮かべそうな話ですが ...

この訴訟の結論を通じて改めてはっきりしたように、彼らの行動を正当化できるような法律的根拠は何ひとつありませんでした。言うなれば、彼らは蛮行を働いたのです。状況から考えて、岡田和生氏とその取り巻きたちが相応の報いを受けるのは、当然の成り行きではないでしょうか。

実際、刑罰が現実のものになる兆候はあります。ひとつは、フィリピンの司法省が、岡田和生グループによるオカダマニラの乗っ取りを強要行為と見なして、2022年10月に「起訴に相当する」との判断を出していること。

そしてもうひとつは、2023年7月になって、新たに窃盗罪を理由とした逮捕状が出ていることです。

こちらの逮捕状では、岡田和生グループがオカダマニラを奪い取ったあと、施設から5億フィリピン・ペソの資金を違法に吸い上げたと見なしています。

Philippines Court orders arrest of Kazuo Okada, Tonyboy Cojuangco, Dindo Espeleta and associates for qualified theft – IAG
Philippines Court orders arrest of Kazuo Okada, Tonyboy Cojuangco, Dindo Espeleta and associates for qualified theft

The Paranaque Regional Trial Court has ordered the arrest of Kazuo Okada and his associates for siph ...

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ひかえめに見ても、岡田和生氏がなかなか危うい状況にあることは間違いないでしょう。自ら催した宴のツケは、かなり高いものになるかもしれません。


この記事をまとめるにあたって参考にした資料

  • フィリピンの最高裁判所が公表した書面
  • ユニバーサルエンターテインメントが公表した「当社元取締役岡田和生氏による フィリピン最高裁判所への訴え棄却のお知らせ」


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